「…“面白い”方でしたね」
「とまあ、こんな感じ」
冷水を飲みつつ、簡略して「オレ」のことを話すと、彼はなるほど、としきりに頷くもどこか気落ちした様子を見せた。
「どうかしたのか?」
「あの…恋愛対象は女性だけですか…?」
「ああ」
「そうですか…」
彼はそういうと腕を組み考え込んでしまった。それもそうだ。見た目が男性である彼からすれば「お前は恋愛候補に1mmすら上がりません。お引き取りください」と言われたようなものだ。オレだってそう言われたら心が折れる。
…なんだか申し訳ないな。どう励ましたらいいのだろうか。
「まあ!祐ちゃん、彼氏さん泣かせたらダメじゃない!ごめんなさいね、祐ちゃんが何かまたやらかしたのでしょう?」
「その言い方だといつもオレがやらかしてるみてーじゃん。それにアイツは彼氏じゃねーて」
掛ける言葉を探していると、チーズケーキ×2とアイスコーヒー×2を持って来た舞子が口を挟む。
「…いえ、俺が力不足なだけなんで!」
奴は冷水を一気に飲み干した。
「俺は祐さんが例え女性でもFTMでもどちらでも構いません!俺は全性愛者なので、性別なんて気にしません!今は女性の方しか好きにならないようですが、いつか必ず落としてみせるのでよろしくお願いします!では失礼いたします!」
早口でそう言い残すと、あろうことかチーズケーキとアイスコーヒーを手付かずのまま店を出ていった。
てか、アイツ心折れてなかったのかよ。意外と図太いんだなとオレは妙なところで感心する。
はっと我に帰り、「おい!会計は!」と叫ぶも時すでに遅し。結局オレが2人分支払うことになった。
「なんなんだアイツは…」
「…“面白い”方でしたね」
「…怒ってる?」
「怒ってないわよ^ ^」
「いや、だって…」
「“怒ってないわよ^ ^”」
「ア、ハイ、スイマセン」
「祐に“は”怒ってないわよ^ ^」
アイツの第一印象はまさに最悪だった。
それから、アイツがどこの誰かも結局分からないままだった。
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