新木祐菜の過去

2000年6月28日、オレは福岡県糸島市で生を受けた。父・母・オレ・妹のいたって平凡な家庭で育ち、公立小中学、私立高校、私立大学を経て今勤めている会社に新卒で入社した。


物心がついた時から男の子のように振る舞い、父は息子がいるようだと喜んだが、母はせっかく可愛い女の子に産んだのにと泣き悩んでいた。オレは自分らしく生きられるこの環境に感謝しつつ、オレの生き方は誰かを悲しませるのかと幼心に傷ついていた。妹からお姉ちゃんと呼ばれることも当時から苦痛で仕方なかったし、スカートを着ることも嫌だった。


高校受験シーズンでは、母は何かと女子校を勧めた。きっと思春期になっても女性らしく振る舞わないオレに嫌気がさしたんだろう。また当時はオレよりも妹の方が女らしく振る舞っていたため妹ととの方が仲良いみたいだったしオレにあまり干渉しなくもなったため、オレもそれで良かった。しかし母のたっての希望で結局オレは女子高に進んだ。


女子高は入学前は女女してて、「ザ・女の子」というイメージがあったが実際は意外にも活気のある学校だった。オレはボーイッシュだったためか入学後一躍人気になり、オトコとしてちやほやされた。何人かからは告白され、その中の2人と高校時代は付き合っていた(二股ではない)。恋愛対象は女性だったので、付き合っているときは幸せだったし、何なら永遠に在学していたいとさえ思っていた。


高2の新学期、オレは今の友人の1人に出会う。清原千佳(当時16、現在25)だ。彼女、いや彼?は自分の性を女ではないと感じていて、だがしかし男でもないとも話していた。彼は「僕」という一人称を使っていて、オレも当時使っていた「私」から「僕」、やがて「オレ」を使うようになり、「オレ」がいつしかスタンダードになった。彼にはFTMの双子の妹さん、愛佳(現在は愛斗として生活)がいることを知り、3人で遊んだこともある。


大学に進学すると、もう1人の友人と出会う。結城舞子(当時19、現在25)だ。彼女は元男性で、入学前に性転換手術を受け、女子大生として大学に通っていた。同じサークルで知り合ったのだが、その縁が現在まで続いている。


就活シーズンに入る中、舞子が父親の喫茶店を継ぐと知り、その喫茶店の近くで働きたいと思い、その喫茶店のある福岡市東区を中心に就活を展開。とある会社での説明会でばったり千佳と再会し、2人で同じ会社を何社も受けることに。結果2人ともに内定を頂いた今の会社に入社して、現在4年目となる。


今の会社にはFTMであることは伝えてはいない。

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