40. 蕎麦

 色々種を入手して、植えてあった植物の中には、実は蕎麦そばもあった。

 今日は秋の新蕎麦が収穫できる。


 蕎麦は米みたいに水が多くなくても育つし、寒冷地でも育ちやすい。

 このへんは温暖な気候だからあんまり関係ないけど、荒れた土地でも育てやすいというのは大変助かる特性だ。

 だから心配とかはしていなかったけど、うまくできたようだ。


 蕎麦の実をどんどん収穫していく。

 これには父ちゃんと母ちゃん、それからドロシーの両親のバドル、メーラも協力してくれた。


「えいやこら」

「「「えいやこら」」」


「ほいさっさ」

「「「ほいさっさ」」」


 俺たちは掛け声を上げながら蕎麦を収穫した。なんか三人娘が復唱しながら言ってくれるので、ちょっと面白い。


 回収した草から種を脱穀して、使う分だけ臼でいて粉にしていく。

 うまいことモミ殻を除いて粉だけにしたものを回収する。


 蕎麦粉に少量の小麦粉を混ぜて、そしてお湯を混ぜてこねていく。けっこう大変。こねこねこね。

 こねこねしたものを、伸ばしていき、麺棒で伸ばして、伸ばして、折りたたんで、そして包丁で切るとですね、はい完成。


 麺のほうの蕎麦が完成です。


 醤油と出汁のスープが最高なんだけど、醤油はないのでコンソメスープみたいな野菜と塩ベースのスープをご用意しました。


「ささ、でますよ」

「へえ、これが麺なの?」

「まあ蕎麦はあんまり麺とは言わないけど、まあ麺料理だね。蕎麦は蕎麦っていうね」

「へえ」


 お湯に少量塩を入れてあるものに、蕎麦を投入していく。

 さすがにフォークというわけにはいかないので、菜箸を用意してありますぞ。


 ぐるぐるお湯の中で踊る蕎麦を眺める。


 美味しくなーれ、と唱えるといい気がする。きっと神様、女神様にも届くかもしれない。


 お湯を捨てて、出来上がった蕎麦をザルに上げる。

 スープと合わせて、まだ暑い季節だけど、熱い蕎麦の完成だ。


「わー、なにこれ」

「だから蕎麦だよ」

「へえ、なんだか面白いね」

「細長いにゃんね」


 うん、小麦でパスタとかうどんとか作ってもいいはずだけど、うちはずっと薄焼きパンばっかりだからね。

 まあ麺類は珍しいよね。この前、町に行ったときも麺は見かけなかった。


 とにかくこうして、西洋風スープの蕎麦もどきが完成した。


「あちち、でもなにこれ、美味しいね」

「食べにくいけど、固くないから好き、です」

「美味しいにゃん」


 まあ、普通の感想だけど、喜んでもらえたようで何よりだ。


 ついでに蕎麦を切った残りを、丸めて蕎麦饅頭まんじゅうにしてみた。

 味付けは薄い塩味で、中に塩漬けの葉っぱ、漬物みたいなやつを入れてある。


「これも、なんだか変わった食べ物だね」

「美味しいにゃん」

「熱いけど、美味しい、です」


 若干一名、美味しいとしか言わない語彙力が低い子がいるけど、気にしてはいけない。

 彼女は感覚で生きているのだ。野生の勘もあながち侮れない。


 うちの両親とかにも蕎麦を提供して、みんなも食べた。


 蕎麦粉は普段から小麦粉と混ぜてパンとかにしてもいいから、応用が広いはずだ。

 補助食品としては優秀なのではないでしょうか。


 畑で小麦だけだと連作障害とか発生する可能性があるので、蕎麦もローテに加えておくと、たぶん安全性とか生産性とか向上すると思う。


 そういえば、蕎麦でヨーロッパといえばガレットか。

 ガレットのようなものならできるかな。薄くしてフライパンで焼けばいい。


 ということでおやつには蕎麦のガレットを作った。

 少量蜂蜜を垂らして、はい、いただきます。


「「「いただきます」」」


 蜂蜜をかけたガレットをくるくる巻いて、ぱくっとくわえた。


「「「おいしー」」」


 これは好評だった。甘いものみんな大好きだもんね。

 ジャムの残りとかも少し出して、塗って食べたけど、美味しかった。


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