第14話 なみだくんさよなら

――次の日


太郎はいつものように学校に向かった。

下駄箱をあけると手紙が入っていた。

手紙には【死ね】という文字がびっしりと書かれていた。


心無い言葉。


太郎は思った。


ああ、いじめが再びはじまるんだ。


その手紙を宍道が掴む。


「ん?ラブレターか?」


そしてその手紙を読む。


「あ……」


「なになになに?ラブレター?」


魚々子もその手紙を覗き込む。

表情が険しくなる。


「いや、あの……

 こんなんだから僕には近づかないほうが……」


「ぎゅー」


そういって自由が太郎の身体をぎゅっと抱きしめる。


「え?久留里さん?」


「折角仲良くなったのに。

 そんな切ないこというなよー

 なので、ハグの刑に処す!」


自由は、そういって口を尖らせて言葉を続ける。


「それ以上言うとキスの刑だぞー」


「えええ……??」


太郎は変な展開になったことに驚く。

すると麻琴が現れる。


「影無くん揉み合いの喧嘩してるの??ってあれ?」


麻琴は首をかしげる。

そして何かを納得するように頷く。


「あー、柔らかい部分の揉み合いかーなるほどー」


麻琴はそういって床に落ちている手紙を拾い上げる。


「これ?誰に書かれたの?」


麻琴がそう尋ねると魚々子がいう。


「そんなのわかるわけないじゃん」


「えー?

 久留里パパならわかるんじゃない?」


「あ、筆跡鑑定?」


自由がピンと指を立てる。


「うん」


麻琴がニッコリと笑う。


「え?でも教師ってそこまでわかるの?」


素直な感想だった。

でも太郎は知らなかった。


「私のパパ。

 そのへんの鑑識官以上の鑑識能力あるからわかると思うよ」


自由は得意げに太郎を引っ張った。


「え?え?え?」


太郎にはその行為が変に見えた。


「影無。こういうやり方ってのもあるんだぞ」


宍道がそっと耳打ちした。


「え?」


「いじめは初動捜査が大事ってこと」


魚々子が答える。


「こんなんで終わりたくないだろ?

 折角お友だちになれたんだし。

 甘えてくれよな!」


宍道の言葉に太郎は泣きかけた。

でも、ここは笑うべきなんだ。

そう思ったのに涙が溢れた。


なみだくんにさよならしたい。


そう思った。


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