第15話 せいじかなんかこわくない

「で?僕のところに来たわけ?」


十三がため息交じりにそういった。

そんな十三に自由が言う。


「お父さんお願い!この字を鑑定して!」


「えー、それはしないよ」


十三は拒否をした。


「えー。てめぇーセンコーだろ?

 なんとか丸めて解決しろよ」


宍道が怒鳴る。


「あー、うん。手は打ったから。安心して!

 多分もう影無くんには手を出さないと思うよ。」


「はい?相手が誰かもわかんないのに?」


魚々子が首をかしげる。


「あれ?見てない?」


十三が指を向ける。

するとそこには廊下に立たされている杉村の姿があった。


「バケツ持ってるけど?」


自由がそういって心配そうに言った。


「うん、人の重みを教えているところ」


「アイツが犯人?」


魚々子がそう尋ねると十三がうなずく。


「そだよ。あとで影無くんに謝らせようと思ってね。

 あと緑川さんにも」


「いいのか?あの杉村ってやつの親議員なんだろ?」


宍道が十三の目をしっかりと見る。


「議員なんか怖くないよ?

 それに税金でお金をもらっている偉い政治家さんの子どもがいじめをしているってことがバレるほうが痛いと思うよ?」


「それはそうだけど……

 なんか教育委員会とかに圧力をかけるとかあるじゃん?」


魚々子がそういうと学園の校長の武蔵野むさしの あつしが現れる。


「ははははは!

 政治家さんが教育委員会に圧力をかけてっていじめをなかったことにするってことを本当にやったら。

 それはそれで問題ですよ」


武蔵野校長は楽しそうに笑った。


「でも、左遷とかあるんじゃ?」


魚々子の問いに武蔵野校長のメガネが光る。


「ウチ、市立だけど気にしなくていいですよ!」


そういって武蔵野校長が笑う。


「さぁ、安心したら教室に戻りなさい。

 ホームルームはじまるよ。

 それとも一緒に教室に行くかい?」


十三の言葉に太郎たちはそのまま職員室を出た。


「はぁ、あの子たちなら大丈夫。

 太郎くんは、もういじめられっ子じゃない」


武蔵野校長がそういって優しい表情でその後ろ姿を見た。


「問題は、緑川さんですね。

 今日は休むと連絡がありました」


1年C組の担任である水無月みなづき 柑奈かんなが言う。


「そうだね。心配だね」


十三がため息をつく。


「水無月先生も無理しないように……ね?」


武蔵野校長がそういうと柑奈がいう。


「自分の受け持つクラスのことなんで他人事じゃないんですが。

 いじめほどデリケートな問題はないですからね」


「まぁ、本人たちは反省しないでしょうね」


十三はそういって立ち上がる。


「おや?どうしました?」


武蔵野校長が首を傾げる。


「ホームルーム行かなきゃですよ」


十三はそっと苦笑いをした。

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