Scene02 きみのうた

第10話 ぱんだのゆめ

パンダは大きな夢をみました。

それはそれは大きな夢でした。

でも、それは夢でしかありません。

叶わない夢、

叶うはずの無い夢、

むしろ、叶えてはいけないはずの夢でした。

パンダの夢は終わりました。

パンダは知らない誰かにお礼を言いました


【ありがとう】


お礼を言ったはずなのに何故か涙がこぼれていました

パンダは後悔しました。

その夢をみた事を


【そんな、夢見なければよかった】


パンダは思いました。

もう夢を見ないと

そして誓いました。

もう後悔しないと


パンダはある日、出会ってしまいました。

一人のウサギに

ウサギはずっとパンダの傍に居てくれました。

ずっと、ずっとパンダを励ましてくれていました。

パンダはある日、思いました。


【この人は、どうしてこんなに親切なんだろう】


パンダはずっと、不思議に思っていました。

パンダはウサギに出会うまで

ずっと、ずっと一人ぼっちでした

生まれてからずっと、ずっと一人でした。

だからなのか、寂しいとか感じた事などありません

もしかしたら、寂しいというのを知らなかったのかも知れません。

パンダは、不思議で不思議でたまりませんでした。

パンダは勇気をだして、ウサギに聞いてみました。

でも、ウサギは答えてはくれませんでした。

でも、パンダは心のどこかで安心していました。

ウサギがボソっと言葉を放ちました。

パンダの耳にその言葉は入っていきました。

その言葉を聞いたパンダは幸せになりました。

その言葉を聞いただけで幸せになれました。

でも、パンダは思い出しました。

昔誓ったことを

パンダはその不安をウサギに打ち明けてみました。

ウサギはその言葉を聞くと

優しく笑い、そしてパンダに言いました。


【叶うはずの無い夢なんてないよ】


パンダは自分が恥ずかしくなりました。

弱い自分が恥ずかしく感じました。

パンダは誓いました。

心の中で強く誓いました。


【強くなろう】


自分はもう一人ではないのだから

でも、それに気づくのは少し遅かった。

パンダは願った。

このままの幸せを感じていたい

もう少しだけ

もう少しだけ

その願いは叶わなかった

パンダの目の前からウサギは居なくなりました

探しても、探しても、探しても

見つかりませんでした。

でも、不思議と寂しくはありませんでした。

でも、不思議と涙はでませんでした。

でも、不思議と動きませんでした。

でも、不思議と何も聞こえませんでした。

パンダは、誰も知らないどこかに旅立ちました

パンダの夢は終わり

そして、

パンダの夢は終わりました

ウサギの気持ちを知らないまま


ウサギは後悔していた。

パンダに言ったあの言葉を

例え嘘でもパンダが元気になるのならと

そう思って言った言葉を

でも、パンダがその言葉を聞いたとき

パンダはとても幸せそうでした

でも、心のどこかでずっと後悔していました

ある日、ウサギは自分の気持ちに気づきました

それは、今までの後悔とは反対の気持ちでした

ウサギはこの言葉を伝えようと

パンダに会いに行きました。

でも、その気持ちに気づくのは少し遅かった

ほんの少しだけ遅かった

ウサギがパンダにどんなに話しかけても、

パンダは答えてくれません。

ウサギがパンダのどんなに体を揺すっても

パンダは動いてくれませんでした。

ウサギは後悔しました

すると何故かパンダの顔が少しだけ笑いました。

ほんの少しだけ笑っているように見えました。

そのパンダの顔は少しだけ、ほんの少しだけだけど、

幸せそうに見えました。

ウサギはパンダにお礼をいいました。


【ありがとう】


お礼を言っているのに何故か涙がでました。

ウサギは誓いました。


【もう、後悔しないよ】


パンダは大きな夢を見た

大きな大きな夢だった

パンダの夢はもう叶わない

パンダの夢はもう叶っているのだから


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