8 露店で準備
ズボンはあきらめた。
しょうがないんだ。魅力値が下がって弱くなってしまう。
恥ずかしいけど、すごく、恥ずかしいけど、スカートを穿こう。
なんか、ミニスカートだと思うと、途端に周りの人の視線が気になってくる。
みんな僕のスカートと太ももの境目を見て、にやにやしてる気がする。
気のせい、気のせいだ。
パンツを見ようとしてると思うとか、自意識過剰だと思う、うん。
なんだかどうしても落ち着かない。
「うぅ」
「なにどうしたの?」
「スカートが恥ずかしい」
「そんなの、慣れよ慣れ。私だって毎日学校行くのにも、私服だって半分はスカートだけど、いちいち視線なんて気にしてたら生きていけないわよ」
「う、うん」
すごいなリズちゃんは。女の子って強いんだな。
露店で手ごろな防具を見つけた。
革の鎧Lv1+7、超初心者用装備だ。お値段1,200G。たぶん安い。
「ねえ、これ」
「うん、いいんじゃない? 最初だからティーシャツのままでも大丈夫だけど」
「そうだよね。くださいな」
お買い上げした。
革の防具セットだ。これでミニスカートを卒業だ、と思ったのだけどスカートの上から着用するタイプで、下はスカートのままだった。
手と足を覆う部分と体を覆う部分に分かれている。
革は黒でミニスカートは紺色。ファッション的にもカラーバランス的にもそんなに悪くはないと思う。
魅力値は40。ちょっとだけ上がった。ティーシャツよりはかっこかわいいと思う。
総戦闘力は135だったのが155に上昇。
武器や防具には補正というのがあるので、その値分だけ総戦闘力も上昇する。
それから『+7』これは強化値だ。
「これを+7するなんて、モノ好きもいるのね」
「どういうこと?」
「本来ならLv1の初心者装備なんてすぐ更新するから強化なんてしないのよ。でもこれは+7もしてある。かなりの掘り出し物だね」
「そうなんだ」
「もしかしたら、何人もの利用者が1ずつ強化していって、複数人を渡り歩いた防具なのかもね」
「大切に使われてたんだ」
「そうだね」
「うふふ。今度は僕が大切に使うね」
なんか防具を装備すると、それらしくなった。
「僕もこれで、一丁前の冒険者だね」
「そうだね。でも私は冒険者より姫様になってほしいかな」
「姫、う。ど、努力はしてみるね」
「うんうん、そうだよ、そうだよ」
でも実はまだ戦闘スタイルは決めていない。
魔法、剣、弓、槍、いろいろな武器が存在する。
銃もあるけど、火薬じゃなくて魔法銃だ。杖の一種とされているってリズちゃんにさっき教わった。
魔石をセットして魔法を連射できるけど、魔石は消耗品でお金の効率は悪いんだって。
「うーん。どんなプレイしたらいいか、全然わかんないよう」
「どうかしらね。チュートリアルでもやったと思うけど、色々な職業をちょっとずつやってみて、自分に合うのを探したら?」
「うん、そうしてみる」
次の露店に向かう。
「HPポーションくださいな」
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
このお店は初級HPポーションが他のお店より安かった。
一巡してみると、なんとなく値段がわかる。
必要かなと思った商品は、チェックしながら見て回ったもんね。僕は偉い。
また他の露店、こちらでは初級MPポーションを売っていた。
「初級MPポーションは」
「あ、ごめんなさい。さっき売り切れました」
「そっか。遅かったか」
「はい。ごめんね?」
「いえ、また機会がありましたら、よろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも」
頭をぺこぺこさげて、次の露店に行く。
そちらでは売り切れのお店よりちょっと高かったけど、普通の値段の範囲で初級MPポーションを補充できた。
ポーションは20個ずつくらい買ったよ。
HPポーションは赤でメロン味。
MPポーションは緑でイチゴ味なんだって。
どちらも試験管の細いガラス瓶に少量入っている。
これならすぐ飲めるし、別に飲まなくても掛けてもいいんだって。
ジュースみたいに沢山じゃないから、回数も多く飲めるんよ。
一度ログアウトして午後休憩をする。
僕の部屋はマンションで、エアコンも掛けてあるから、涼しかった。
さすがにエアコンなしでゲームしている間に汗だくになって、リアルの体が水分不足で死にかかったりしないように、配慮はもちろんしてある。
「セミの声が聞こえるね」
『はい。熱いですね。天気は晴れ。本日の外の最高気温は39度です』
AIのミニマムちゃんが応答してくれる。
彼女は統合型スマートAIなので、家電の管理からタイマー、アラーム、来客のチェックとかいろいろな便利機能がある。
『水分補給を推奨します』
「うん。そうするね」
僕はキッチンに行って、サイダーのペットボトルからコップに入れて飲んだ。
「ぷはぁ。生き返る。思ったより喉が渇いてたんだな」
鏡を見てみる。
僕の顔だ。まるで女の子みたいな色白の小顔でほっぺが丸い。
髪の毛は最近ちょっと伸びてきたから、余計女の子みたいに見える。
可愛いのかな、見すぎて、ちょっとよくわからない。
ニコッと笑ってみる。
「あ、うん。可愛いかもしれない」
自分でいうのも変だが、まあそう見える。
背も低くて華奢だった。筋肉とか全然つかないから、走るといつもビリだったりする。
でも反射神経とかは悪くないと思う。別にどん臭くもない。
むしろあっち向いてホイとかすると、だいたい勝つ。
別に天然ちゃんでもないし、普通だと思う。女の子っぽい以外は。
「ミニマムちゃん」
『なんでしょうか?』
「僕って、男の子に見える? 女の子に見える?」
『はい。どちらにも見えますね。きちんと服を着れば女の子ですね』
「そっか」
さて、気を取り直して、ゲームを再開しよう。
夏休みの課題は、VRゲームのレポートだけだから、これさえやればずっと遊んでいてもいいんだもんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます