第10話 リュークside1
俺には幼馴染がいる。リシェ・ロマーノ。彼女とはよく公爵家で遊んでいた。後から聞いた話だが、出入りが自由になっていたのは彼女と同年代の友達を作るために公爵が自ら選んだ子供達が俺らだったらしい。
リシェは公爵令嬢らしくマナーや勉強に取り組んでいたが、可愛い見た目とは裏腹に気に入らない事があると癇癪を起こす事が多かった。
そのせいか他の令嬢達はリシェとは距離を置き、残ったのは数人の令息達だった。
俺は特に不満を感じた事は無かったんだ。リシェの我儘もあーまただなとしか思っていないくらいだった。
そして8歳の時、イーリス・ブライトン伯爵令嬢と婚約が決まった。当時の彼女は伯爵の後ろにしがみつき俺を窺うように見ていて可愛い子だなとしか考えていなかった。俺も幼かったせいもあり何にも分からず、考えてもいなかった。
「リューク、貴方、婚約者が出来たのですって?」
「ああそうだよ。それが何?」
「婚約者に贈り物をするのを辞めた方がいいわ。女の子はね、品物で男を見下すのよ」
「そうなのか?よくわからないけど」
「絶対送っては駄目よ?手紙も駄目。無視をして。これは公爵家からの命令よ」
「・・・命令?ああ、分かった」
俺はよくわからずにリシェの言うことを信じていた。過去に戻って自分を殴ってやりたい気分になる。
俺達はリシェと過ごす事が多くなり、学院へ入学する歳になった。
婚約者と共に登校するべきだと父上も母上も言っていたし、俺もそう思い準備をしていたのだが、登校する前に突然リシェは我が家へとやってきた。
つまり俺は婚約者と会う事を邪魔されていたのだ。
当時は本当に何にも考えていなかった。父上は怒っていたが、気にする事なくリシェと登校した。学院生活は騎士科だったのでクラスは男ばかりだった。
最初は男同士でつるんでお昼を食べていたのだが、ある日、ロマーノ公爵から邸に来るように言われた。俺たちは不思議に思いながらも5人で公爵家へと向かった。
「公爵様、突然の呼び出し。どうされたのですか?」
「あぁ、突然呼び出してすまんな。リシェの事だ。どうやらリシェは友達がおらず1人で食事を摂っているようなのだ。お前たち一緒に食べてやってくれ」
「まぁいいですけど?婚約者と食事をしている中に入る事になりますよ?」
「それは駄目だ。いつもリシェが一番でなければならない。婚約者を連れてくるな。お前たちの親に公爵の意向だ、逆らうなと言えばいい。分かったな」
俺たちは釈然としないながらもリシェと昼食を食べるようになった。どうやらクラスで馴染めていないらしく、1人で食事をするのが嫌だと俺たちに文句を言っていた。
そうして共に過ごしていくうちに、クラスの連中は1人、また1人と婚約者とお昼を共にするやつが増えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます