第9話

 リューク様はリシェ様と一緒になりたいのではないのかしら?けれど見るからにリューク様は真剣な様子。


「どうされたのですか?王太子殿下に苦言を呈されたのでしょうか?」


「ああ。俺とイーリスの様子を見ていたようでリシェと結婚するのかと聞かれた」


まぁ、殿下達があの場を見ていたら聞かれても可笑しくはないわよね。


「私と婚約破棄をしてリシェ様と婚姻されるのですか?」


「そんな事をするわけがない!婚約破棄はしない」


「あら、リシェ様を一途に愛しておられるのでは無かったのですか?学院では有名でしたわ」


「それはっ、幼馴染でただ一緒にいただけだ」


「そうですか。リシェ様や周りはそうは思っておられなかったようですが」


「これからはリシェと一切関わらない。君の傍に居たい」


えっ。今更の宣言?


リューク様の考えと行動がよくわからないわ。私は顎に指をあてて考える。一生懸命頭をフル回転させても謎は解けそうにない。


「私達は政略結婚ですわ。傍に居なくても構いません。例え婚姻しても3年後には離婚してもいいとリューク様のご両親にも言われておりますので気にしなくていいですわ」


「離婚しない。君と生涯仲睦まじく過ごしていきたいと思っている」


どういう風の吹き回しなのかしら。よく分からないわ。話せば話すほど私の頭の中は混乱する。


「・・・そう言われましても。リシェ様はリューク様を含めた5人の令息の中から結婚相手を見つけるというお話があることも伺っておりますわ。公爵家から打診を受けておられるのでは?」


先日、殿下と話をした時にそう言っていた事を話すとリューク様は青い顔をしている。やはりあったのかしら。


「俺は、これからイーリスに認めて貰えるように誠実に生きる」


「は、はぁ。認めるも何も・・・」


「今日は君にまず謝りたかった。今から改めて伯爵へ謝罪しに行ってくる。では」


どうしたのでしょうか。


今までと態度がガラッと変わったような、気がしなくもないのですが。私は残されたテーブルの上の冷めたお茶を飲み、部屋に戻った。

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