第64話 合体技
「これは便利だな」
俺は今、新しく作っている町の領主館にやってきていた。
――転移ゲートを使って。
空間に干渉するタイプの魔法は、とんでもなく難易度が高いと言われている。
加えて、その運用には大量の魔力が必要ともいわれており、扱えるのは一握りの、それこそ大魔法使いと呼ばれるレベルの者達だけだ。
しかも転移ゲートはそんな空間魔法における最上位魔法であるため、世界に何人もいない、賢者と呼ばれる存在でなければ扱えない物である。
だが俺達はそれを、屋敷と領主館を繋げるための足として利用する事が出来た。
何故か?
大精霊達が優秀だったから?
違う。
確かに彼女たちは優秀だが、残念ながら大精霊の状態では自分達の領分からはみ出した能力や魔法は扱えない。
では賢者を雇った?
それも違う。
今の男爵家に、そんな超越者を雇う財力はない。
彼らの年収は下手したら大貴族並みだからな。
というか、抱えてる国はほぼ確実に爵位を与えて――国に帰属させるため――いるので、そもそも金でどうにかなる相手ではないのだ。
じゃあどうやって?
実は配下の中に、空間関連の特殊スキルをも持つ者が居たのだ。
それはアリンの装備する弓。
聖弓ユミルである。
彼女の持つ能力・
それは空間を超え、離れた相手に矢を転移させて回避困難な一撃を与えるという強力な特殊スキルだ。
あ、因みに、この手のスキルは体内に転移させれば必殺の一撃になるとかそういうのは出来ないぞ。
密度の高い物質の中を出口に設定できない様になっているためだ。
そのため、相手のすぐ目の前に出現させる事は出来ても、心臓の中に直接にとかは出来ない様になっている。
まあそんな事はどうでもいいか。
要は、ユミルは空間を操る能力を持っているという点だ。
じゃあユミルの能力なのか?
それは正解出会って、正解ではない。
彼女の飛ばせるのは矢などの小さなもので、その飛距離もせいぜい10メートル程である。
とても町から町へ人間を飛ばせる力はない。
だからユミルのスキルに手を加えてゲートを生み出している。
まずは彼女の発動させたスキルを、4人の大精霊達が魔法陣化して固定する。
こうする事で、ユミルがいなくとも、特定の波長の魔力を注げばいつでも発動させる事が出来た。
だが当然、大本が矢を飛ばすレベルなので、その効果はそのままだ。
そこで俺の出番である。
F-ランクだった
人が数人同時に送れて、かつ館と新設した領主館が繋げられるレベルであるC-ランクまで。
いや、ほんと便利なスキルである。
まあ精霊や使徒であるユミルがあってこそではあったが。
このスキルの欠点と言えば、やはりポイントだな。
ゲートに5千ポイントも使ってしまっているし、そろそろ残高が心もとなくなってきた。
デイリー関連はたいして増えないし、なんかこう……ドカンとポイントの貰えるクエスト生えてこないかな?
それも滅茶苦茶簡単なので。
ま、無理か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます