第18話 敏捷
「が……ああぁぁぁぁっっ……」
村人達の筋力をランクアップさせ、俺自身にもランクアップを施して激痛に身もだえる。
「まるで地獄絵図ですねぇ」
苦しむ俺の横で、カッパーがのん気そうにそう言う。
完全に他人事である。
まあ確かに、精霊である彼女からすれば、人間の生き死にはガチで他人事ではあるんだろうが。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……」
C+に上げただけでこの痛み。
B以上にすると更にきつくなると考えると、死ぬ程げんなりしてしまう。
だが逃げる訳にも行かない。
村が滅んだら、生き延びても俺の人生はほぼ詰みだ。
なので逃げるという選択肢はなく、領主ではあっても、必要なら覚悟を決めて戦う必要がある。
「もう一段階強化するぞ。全員行けるな」
俺の言葉に全員が頷く。
タゴルがアンリの事で怒って凄い形相で睨んでくるが、それはスルーだ。
妹を戦わせるのを避けたい気持ちは分かるが、こっちは命運がかかっているのだから知った事ではない。
そして再び始まる地獄絵図。
「ん?」
村人達にランクアップを施し、自分の筋力をB-に上げようとするとパネルが目の前に現れた。
それには――
『才能の限界を超えてBランクを突破するには追加で1、000ポイントが必要です』
――と表示されている。
どうやら個人個人で限界があり、それを超えるには追加でポイントが必要な様である。
全体ではなく個人と判断したのは、この村で一番の力自慢であるタゴルは最初っからC+で、B-ランク、そして今Bランクに上げた際もそう言う表示がなかったからだ。
50や100ならともかく、1,000ポイントも割く余裕はない。
俺は敏捷性もくっそ低いから、そっちを上げて行こう。
ランクは低いので、敏捷性は一気にF-からE+へ。
一気上げだが、この程度なら筋力を上げるよりかはマシだろう。
「くぅぅ……」
まあでも痛い物は痛い。
その場で蹲り、俺は痛みを堪える。
「おや……」
「ん?なんだ?」
痛みが治まり、少し放心していると、カッパーが俺の横でしゃがんで腹を触って来た。
一体何が目的だ?
「大分スリムになりましたねぇ。これじゃフォカパッチョと呼ぶのは微妙です」
「スリムになった?」
言われて自分の腹部に目をやる。
本来なら脂肪パンパンで山の様に膨らんでいる筈のそこは、カッパーの言った通り平らに変わっていた。
ガチでやせた様だ。
「なんで痩せたんだ?」
筋力を上げても減らなかったにもかかわらず、敏捷性を上げた瞬間腹回りがすっきるするとか意味が分からな……
「あ、そうか!」
俺はその理由に気付いて声を上げる。
敏捷性とは行ってみれば身軽さだ。
そして当然、重りとなる脂肪は素早い動きの妨げとなる。
だから素早い身の動きの妨げとなる脂肪が、ランクアップで減ったに違いない。
……痛みはあるけど、こんな素早くダイエットできるとか画期的だな。
これできついダイエットとかをしなくて済む。
ランクアップ様様だ。
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