第11話 不味い!
「領主様、どうぞ」
村長からスープを手渡される。
これは魔物の肉や内臓が使われたスープだ。
森から帰った村人達の成果は、完全に0って訳ではなかった。
彼らは大きなイノシシに似た魔物を狩って、それを持ち帰って来ていたのだ――門の外に置かれてて、俺は最初気付かなかったが。
「ありがとう」
俺はその手渡されたスープに最後のチェックを行う。
なんの?
魔物を蘇生できるかどうかのさ。
俺は魔物の蘇生チェックを三度行っている。
一度目は解体前。
そして二度目は解体後の、骨だけの状態。
そして最後がこのスープに入っている調理された肉キレだ。
魔物の蘇生自体は問題なくできた。
まあ畑の植物や人間も蘇生できた訳だし、そこは当然だろうとは思う。
で、一回目の蘇生に提示されたポイントなんだが、なんとたったの300ポイントだった。
人間の10分の1以下である。
神様的には、魔物は人間より下って事なんだろうな。
何せこれ、神様から貰ったスキルでの結果な訳だし。
で、二回目は1,500ポイントだった
最初の5倍。
どうも死体の状態次第で、蘇生にかかるポイントは違う様だ。
そして最後の肉きれからの蘇生は3,000ポイント。
この状態からでも蘇生できるのは素晴らしいが、最初の10倍もかかってしまう。
これじゃ、食料の増産には使えないな……
俺が魔物で蘇生のチェックをしたのは、食糧事情の為である。
そもそも日照りで厳しくなる以前から、僻地にあるこの村は貧しかった。
なので水と畑を復旧したとしても、裕福な生活からは程遠い。
しかも日照りで池の魚とか、家畜類も全滅してるから猶更である。
だから、蘇生で無限に食料が供給できないかを確認したのだ。
食べて蘇生させて食べて蘇生させてって感じで。
結果はアウトだ。
初期状態の低ポイントなら、デイリーで稼いでちょこちょこ食料の差し入れしても良かったんだが、骨の状態で5倍の1,500ポイントもかかってしまうんじゃ、食料供給としては残念ながら使えない。
コストパフォーマンスが悪すぎて。
まあ、一応どう押しようも無くなった時の保険ぐらいにはなるだろうが……
「魔物の肉ですので、お口に合いませんかもしれませんが……」
今居る場所は村の中央にある建物。
一応、集会所的な比較的大きめの建物だ。
ああ、言うまでもないとは思うが、貧しい村なのでこの建物はかなりボロイ。
台風なんかが来た日には、余裕で飛んでいきそうな程に。
なので余り居心地は良くないが、もちろんそれを堂々と口にはしない。
言ってもしょうがないしな。
だって貧しいのだから。
「気にしなくていいさ。遠慮なく頂くよ」
俺はそこに集まった村の代表的な数名と顔を突き合わせながら、先ほど渡されたお椀の中のスープを些事で救って口にする。
うん、不味い!
まあこれは食べる前から分かってはいた事だ。
何故なら、魔物の肉が不味いのはこの世界の常識だから。
それでも迷わず口に運んだのは、まずは領主である俺が口にしない事には周りの人達が食事を始められないからである。
食料の少ない中、振る舞われた物を食わないという選択肢はないしな。
なので我慢して食べる。
因みに、魔物は糞不味い味に反して栄養価はとても高かったりする。
完全食と言われるぐらいに。
だから味は置いといて、食料不足の差しいれにはもってこいだったりはする。
「さ、我々も頂こう」
俺が口にした事で、その場の人間達も魔物の肉入りスープを食べ始めた。
それも凄く美味そうに。
別に彼らが味音痴という訳ではない。
不味い物ですら上手く感じる程、飢えていたという事だ。
最低限、収穫期までの食料問題を何とかせんとなぁ……
ポイントがどこかから湧いてきてくれない物だろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます