第9話 畑

「ここになります。領主様」


「ふむ、酷いな……」


村長に案内され、俺は農地へとやって来た。

農地は村の東側にある大きな池を水源として広がっている形なのだが、目の前には予想通りの悲惨な光景が広がっていた。


……完全に枯れてるし、水源の池もからっからに干上がって底がむき出しだ。


「まあ予想はしてたけど、水を出しただけじゃ駄目そうだな」


「はい……」


畑もそうだが、このサイズの池なら魚なんかも取れただろう。

そっちも言うまでも無く全滅だ。

何せ水が一切ない訳だからな。


「どれどれ……」


鑑定を発動させる。

畑と池のランクは当然Fの-。


と思っていたのだが――


池はF-だけど、畑はランクがないぞ?


鑑定では畑と出てはいるのだが、何故かランクが表示されない。

ひょっとして弄れないのかとも思ったが、ランクアップ自体はさせられそうだった。


……意味が分からん。


取りえず畑のランクアップを発動させてみと、目の前に青いパネルが急に現れた。

そのパネルには『このままではランクアップできません。植物の全滅した畑のランクアップには蘇生が含まれるため、最初に一万ポイントが必要です』と表示されている。


成程……


植物のない畑は畑であって畑ではない。

だからランクが無かったのか。

そして最初にポイントを払えば、植物を復活させてくれる、と。


死んだ植物を復活させる事が出来るのは、流石神様のくれたチートと言えるだろう。

が、必要ポイントが出鱈目に高い。


初期投資だけで一万も必要とか……いやまあ、畑の広さと、そこに植えられた植物の数を考えたらそうでもないか。


どちらにせよ、ノーという選択肢はない。

畑を復活させないと、面倒くさい事になるしな。


「よし、やるか」


俺は一万ポイントを使って畑を復活させ、そして更に追加の1万2千ポイントを使って畑を一気にCランクにまで上げる。

ランクアップにかかるポイントもかなり高かったが、まあ広い畑のランクアップだし、仕方ないと割り切って行く。


ランクアップさせると、ひび割れていた地面の土が湿り気を帯びた物へと変わる。

そして完全に枯れていた植物に青みが戻り、日に向かって力強く立ち上がりだした。

正に完全復活である。


「おお!畑が!!」


その奇跡を目の当たりにし、村長が驚嘆の声を上げる。


「これで……これで村が救われます。ありがとう御座います。ありがとう……御座います。ありがとう御座います」


余程嬉しいのだろう。

村長がその場で跪き、目から涙を流しながら俺に感謝の言葉を繰り返す。


喜んで貰えて何よりだ。

2万2千ポイントもかけた甲斐があるという物。


次は池だな……


池をCランクにするのは千ポイント程だった。

まあこちらもサイズが大きいので、多少高くつくのは仕方ない。


「にしても、畑はなんであんなに一気に跳ね上がったんだ?」


畑のランクアップはC以降、一気に必要ポイントが跳ね上がっていた。

一段階上げてC+にするのに、なんと3万ポイントも必要となる。


「見た感じはCの時点で十分元気な状態なんだよな。そう考えると……」


C+以降は、作物に何らかの効果がプラスアルファで付くのかもしれない。

ゲーム的な、一時的にステータスが上がるとか、HPが回復するとかの効果が。

そうでもないとこのポイントの跳ね上がり方の説明がつかないという物。


ま、3万ポイントも残ってないから今は確認しようはないが……

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