第3話 荷運び
「おっも!無理!」
荷物を運ぼうとしたが、重くて運べない。
よくよく考えたら、この15年間ストレスからの暴食で俺の体はぶよぶよだ。
加えて、運動なども全くしてこなかった。
そんな様で重い荷物を運びこむなど、土台無理な話である。
「ランク上げよ」
神から貰ったギフトは、人間の様な生物にも問題なく使う事が出来る。
まあ、領地なんて漠然としたものにまで仕える訳だからな。
そういうのも出来て当然って感じだ。
自分を鑑定すると――
エドワード・スパム男爵(S-)
――と表示される。
どうやら俺の人間としてのランクはS-の様だ。
ん?
なんでそんなに高いんだ?
そう思うかもしれない。
何せ、ちょっとした荷物も運べないデブな訳だからな。
当然だが、魔法の方もからっきしである。
だが考えてみて欲しい。
俺には神から授かった強烈なギフトがある事を。
要はマイナス要素の塊であるゴミ野郎でも、神がかったギフト一つでそこまでランクが上がっていしまうという訳だ。
「ランクアップに必要なポイントは……100万。うん、無理」
俺のランクをSに上げるには、100万ポイント必要だった。
領地のランクアップと全く同じである。
当然だが、現在の保有ポイントでは全く足りない。
「こういう時は、詳細でランクアップだな」
詳細によるランクアップ。
ランクアップは、構成する要素ごとに分けて上げる事も出来た。
まあこれは全てのランクアップではなく、出来る物と出来ない物に分かれるが。
俺の要素を細かくランク分けするとこうだ。
――エドワード・スパム男爵――
ギフトSSS
筋力F-
魔力F-
敏捷F-
体力F-
知力D(弄ると人格に影響が出る項目のためロック中)
スキル・魔法
無し
――――――
見事にギフト以外ゴミである。
ていうか、知力の項目の横になんか怖い事が書いてある。
まあ確かに、知能が上昇したら考え方なんかも変わって来るだろうから、人格面に多大な影響は出るわな。
取り敢えずロックされてる様なので、そこは気にする必要はないだろう。
え?
当たって砕けろを物理でしたアホなのに、なんで知能がF-じゃないんだって?
それはたぶん、前世の記憶が戻ったせいだろうと思われる。
賢くはなかったが、前世は今世程クルクルパーじゃなかったし。
「上げるのは勿論……筋力だ」
俺は【ランクアップ】で、自分の筋力をF-から一気にCまで上げる事にした。
必要ポイントは80ポイントとなっている。
屋敷の倍ちょっとだな。
屋敷が必要ポイントが少なかったのか。
それとも、生物のランクアップにかかるポイントが高いのか。
そういう細かい部分までは流石に神様から教えて貰っていないので、これから使っていく過程で要検証だ。
何せポイントは無限じゃないからな。
可能な限り効率よく使っていきたい所である。
「ぎゃああああああああ!!」
スキルを発動させてランクを引き上げた瞬間、全身に激痛が走った。
余りの痛みに俺は地面に倒れ、その場で呻き声を上げる。
「ぐぅぅぅぅぅぅ……」
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
「う……うぅ……死ぬかと思った」
やがて痛みが治まり、俺はその場に大の字で寝転がる。
どれ程の時間耐えていただろうか?
感覚的には数時間激痛にさいなまれた気分だが、日の位置があまり変わってない様なので実際はほんの数分程度だったのかもしれない。
まあ冷静に考えて、あの痛みが数時間も続いたら気絶してるか。
「何だったんだ、あの痛みは……いやまあ、予想はつくけど」
どう考えても、俺のスキル【ランクアップ】の影響だ。
筋力を上げるというのは、言ってみれば体の造り替えである。
冷静に考えて、9段階も一気に上げりゃ、そりゃ気絶レベルの痛みがあってもおかしくはない。
「次から上げる時は、段階を踏んだ方が良さそうだな」
暫く呆けた後。
取り敢えず体に異常は感じられなかったので、早速運搬作業へと取り掛かる。
「お。軽い軽い」
先程まではびくともしなかった木箱を、俺は苦も無く持ち上げる事が出来た。
これなら直ぐに荷物の搬入も終わるだろう。
「Cランクでも十分だな」
足りない様なら傷みを我慢してもう少し上げようかとも思ったが、その必要はなかった。
俺はそのまま屋敷の扉を開けて、中へと入る。
少々古臭い建物ではあるが、生活するには十分だ。
まあそう思えるのも、前世の記憶が蘇ったからだとは思うが。
流石に王宮に比べたら超絶ショボいからな。
前世の記憶が無かったら、この状態でもきっと悪態をついていた事だろう。
「はぁ……はぁ……しんど」
荷物の運び込みは20分ほどで終わる。
大した時間はかかっていないが、それを終える頃には俺は
筋力を上げて、荷物は軽くなったんじゃないのか?
ああ、荷物は軽かったよ。
じゃあなんでそんなに疲れてるのかと聞かれたら、体力が全くないからと俺は答えよう。
軽く動いただけで疲労困憊。
流石体力F-は伊達じゃない。
「ふぅ……体力も上げとこうか」
何処でどれだけポイントが必要になるか分からないので、出来るだけケチって行こうと思ったが、こうも体力がないと流石にきつい。
なので、体力もギフトで上げる事にする。
因みにCまでに必要ポイントは、筋力と同じ72ポイントだ。
「うっ……くぅ……」
まずはEにまで――つまり3段階上げる。
予想通り体に痛みが走るが、まあこの程度なら我慢できるレベルだ。
「なんか、体力が回復した感じがするな」
どうやら体力は上がった分だけ回復してくれる様だ。
俺は痛みが引くごとに、2段階づつランクを上げて行く。
「ぐぅ……こりゃ……」
一度目より二度目。
そして二度目より三度目と。
どんどんと痛みが倍増して行く。
「段階が上がる程きつくなるのか……」
取り敢えず、体力はD-で止めておく。
これ以上やるのはきつい。
「これ、逆に一気に上げて気絶でもした方が楽なんじゃないか?いややらないけども。取り敢えず汗だくで喉も乾いたし、風呂は……ないだろうけど体は拭きたい。井戸はどこだ?」
俺は一旦館を出て裏側に回ってみた。
井戸なんて物は、大抵裏側にあるのが相場だから。
漫画とかだと。
「ふぁ!?」
予想通り、井戸は裏手にあった。
まあそれはいい。
――問題はその井戸の滑車を引く、河童の姿だ。
なんだこいつ!?
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