第79話
チャージ、チャージ、チャージ !!!!!
ロリやエミリアを中心にユズやアストラッド、ブリュンヒルデたちが陣中で丘を見上げ、『フェリ・フルール・ドゥ・リス』の黒と紅の軍装に身を纏った令嬢や淑女たちが軍馬にまたがった。
そしてそのまわりには、数多くの旧帝国陸軍の戦車が幾つも楔形の陣形を取り、横に拡がっていた。
城壁の前に陣取ったエミリアの本陣の前には塹壕を掘り、土嚢を積み上げた重機関銃の陣地が点々とし、マリア=テレジアたち重機関銃兵と彼女らの直掩をするメイド兵で構成された重機関銃隊がバイスローゼン王国とシュトロホーフェン公爵の連合軍に銃口を向けていた。
突然何もない砂漠地帯に姿を表した黒鉄の敵陣に一糸乱れぬ陣形を整えて行軍してきた王国と公爵の連合軍は足を止めて構えていた槍が揺れた。
敵陣からもあわてた様な叫び声が上がるも撤退の命令がなく、動揺した槍兵の方陣は躊躇いつつも進軍を再開した。
エミリアやアストラッドたちが相方のチハたんのキューポラで腕組みしているロリを本当にするのという顔で見上げた。
ロリは彼女らに目線をくれてやることをせず、組んでいた腕をほどき右手を挙げ、大きな声で命令を下しつつ、振り下ろした。
「チハたんどもよ、前進!! 各自、榴弾を用意!! 前方の敵の前後に向かい、ぅてーっ!! 」
ロリの指令に対して97式中戦車を先頭に左右に95式軽戦車もしくは94式軽装甲車が一両ずつ雁型について三両編成で隊を組み、進軍をはじめた。
先頭についた97式中戦車の主砲が次々に火を吹いた。
それに続いて後方のハゴたんやテケたんが主砲や機銃を撃ち続けた。
榴弾の爆風に吹き飛ばされた槍兵隊の軍勢は隊列を維持することができずに手にした槍を投げ捨てて散り散りに逃げ出した。
丘の上に陣取った国軍や公爵軍の弓兵や魔法兵が遠距離から弩や魔力弾をバラバラに撃ち放ち、援護をはじめた。
しかし第二次世界大戦では相手の戦車砲の一撃を貫通する程度の薄い装甲もいまの敵にとっては文字通りの鉄壁の守りだった。
「チハたんたち97式中戦車は一点集中、敵陣のある丘を崩すように撃て!! 彼奴等の足元を揺らがせろ!!
テケたんら、94式軽装甲車と騎兵隊は敵騎兵を散らせ!!
ハゴたんと95式軽戦車はメイド兵を随伴歩兵に敵歩兵を押し戻せ!!
よいか!! いくら数はあっても敵はアリの集まりじゃ!!
其方たちの敵ではないことを証明せいっ!! 」
ロリの号令にチハたんたち、97式中型戦車は地形を崩すほど主砲の火力はないが、それでも榴弾の集中砲火を行うことにより丘の土地を抉るのに十二分だった。
下から内側へと抉られた丘陵は上に乗った兵隊もろとも崩れ、騎士隊が吶喊するための道を崩した。
土に埋もれた歩兵たちは這うように武器を捨てて丘の上に逃げた。
歩兵たちの混乱と地形の変化により、丘の上の騎士隊は回り道を取らざるを得ず、軍馬の突進力を生かすことができなくなった。
迂回することで横腹を見せた騎士たちが丘の下から駆け上がる足の速いテケたんと小回りが苦手なテケたんをカバーするサンパチちゃんやサンパチ騎銃、100式機関短銃を持った令嬢騎馬隊がその機動力を生かして軍馬を追い回した。
重装騎士たちは一塊になり、ロートバルト軍の陣を目指し軍馬を走らせるが、重さが仇になり、土嚢を積み上げて重機関銃の陣を築いたマリア=テレジアたちの狙撃の的にならざるを得ない。
それを掻い潜る腕前の騎士たちは地形を崩し終えて、後方へと下がった97式中戦車の機銃により側方から撃ち抜かれた。
連合軍の現場のパイク兵や歩兵たちを統率する隊長たちは散発的に攻撃を行いつつ、なんとか方陣を組もうとするが、ハゴたんを中心にした95式軽戦車はメイド兵で構成する随伴歩兵隊を支援しつつ、敵兵を散らして回った。
公爵軍と国軍の連合軍は総崩れとなった。
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