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「向こうへ行ってみよう。」

アヤはそう言うと、交通量の多い道の方を指さした。

「うん。」

タケルは返事をすると、少し走り始めた。

「あっ、タケルくん。

危ないから、お姉ちゃんと手を繋いで行こうか。」

「うっ、うん。」

タケルは立ち止まると、アヤの方へ振り向き、手を握った。

タケルの顔が赤くなった。


交通量の多い道へ出る少し手前まで来た時、不意に右側から白い猫が出て来た。

猫は、歩道の上を歩きながら、歩道と車道の間にある、植え込みの中を見ていた。

「あっ、ミーアだ。」

その猫を見て、タケルが嬉しそうに言った。

「あれが、ミーアね。

ミーア!」

アヤが猫に向かって、少し大きな声で言った。

すると、猫は耳を動かし、少し驚いたように、アヤとタケルを見た。


アヤとタケルがミーアに近づいた時、突然、左側から犬の吠える声が聞こえて来た。

その犬は、飼い主と一緒に散歩している時に、ミーアを見つけて吠え始めたのだった。

ミーアはとても驚き、ビクッと体を動かすと、いきなり、植え込みを潜り、車道の方へと飛び出した。

道の中央まで走った時、ミーアの目の前を車が横切った。

ミーアはとても驚き、その場で立ち止まると、伏せた。

そのミーアに向かって、トラックが走って来た。

トラックの運転手は、ミーアが見えていないらしく、そのままスピードを落とさずに、進んで来た。


「あっ、危ない。」

そう言って、タケルが走り出そうとしたが、アヤは、ギュっと手を引き、引き留めた。

「アヤさん、俺を投げろ!」

ポシェットの中から、タヌ助が叫んだ。

アヤは、ハッとして、タヌ助を掴むと、

「タヌ助、お願い。」

そう言って、力いっぱい、タヌ助をミーアに向けて投げた。


「とどけぇー、間に合えーっ!」

タヌ助はミーアに向かって飛びながら、そう叫んだ。

ミーアがトラックに撥ねられる寸前、タヌ助はミーアの体をギュっと掴んだ。

それと同時にタヌ助とミーアの体が消え、そこをトラックが通過した。


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