リレー8

 良くある心理テストでこのようなものがある。「鳥が今青空に向かって飛びだった。あなたは何羽の鳥を思い浮かべただろうか。」これは友達の人数を計るものだが、おかしいと思う。なぜなら……。


「鳥が飛び立った」と聞いて、鳥が一羽もいない青空を思い浮かべるだろうか、つまりこの心理テストでは、どんな人でも少なくとも一人は友人が存在するという結論になるのだ。それでは友人が一人もいない人間はどうなるのであろうか。

 簡単なことだ。そもそもそのような人間は心理テストを一緒にやる相手がいないため問題はないのである。たとえ心理テストを知っていても、自分で自分の心理は確かめようがないのだ。そう、今の僕のように。

 僕は騒がしい教室の中、一人机につっ伏していた。何の変哲もないいつもの風景である。しかし、そのいつも通りは突如破られた。僕は自分を呼ぶ声を聞いて顔を上げた。


 そこには学年主任の先生がいた。

「あとで職員室に来なさい。」


 私はその台詞が、この世界とはひどくかけ離れた異質なノイズのように聞こえた。

 その一刻、重力が無くなる。視界が歪む。

 心の内奥に打ち据えられていた、私の修羅が強い衝動を伴って、私の言語中枢を支配した。

「う○こ」

 無意識の内に、私の口はそのように発していたのである。


《未完》

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