Day 4. 滴る
とある暑い暑い夏の夜、ついにガラスが汗をかき始めた。
正真正銘の汗であった。
ビールグラス、麦茶のコップはもちろんの事、炎天下の車のフロントガラスもリアガラスも、一様に汗をかき始めた。スマートフォンの類にも例外なくふつふつと水滴が浮いて、人々はその事についてツイートを試みたが、汗によってタッチパネルは指をただしく検知できず、まもなく基盤もやられた。
人類が背中にも汗をかくのと同様、ガラスもまんべんなく汗をかいた。
人類と機械類とがメッセージをやり取りするとき、その間には必ずガラスがあり、いま、ガラスは汗だくであった。
文明の利器の危機である。
ガラスの汗がしょっぱい事に気づいた者があり、その塩の出どころ如何によっては世紀の大発見であると興奮したようだが、目の前では未曽有の危機が進行中であった。バズらせようにも、ツイート可能な機器類はみな死んでいた。
ガラスのコップから塩水があふれだした。
各地のタワーやツリーの展望台から、バタバタと汗が降った。
そうして世界は汗だくとなり、地上は等しく海へ帰り、地球は水の球となった。
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