第14話 募る想い。邂逅


__翌日 午後7時 晴 。


かくしてご褒美を勝ち取った僕は「文化祭を二人で楽しむ」特権を頂いた。

そろそろ待ち合わせの時間だ。渚さんが来るのを待とう。

「お待たせしました!」

息を切らしながら彼女は現れた。

「いや時間ぴったりだし、全然待ってない。」

「いや、でも...」

と言いかける彼女がなんだか微笑ましくてつい笑みをこぼす。

「ちょっとなんで笑うんですか?私は真剣に...」

「ごめんごめん、なんか可愛いなって。」

「...っ⁉//きゅ、きゅうにそういうこというのはやめてください、心臓に悪いです!」

とたどたどしく言う彼女にまた不意に笑みがこみあげるが流石に今回はこらえてみる。




__________


なんやかんやで後夜祭のイベントを楽しんでいた。


「そろそろ終わりだな。」

「そうですね。ところで今日のメインイベント知ってます?」

「あーなんだっけ、公衆の面前で告白して黒歴史にするやつか?」

「もうちょっとロマンチックな言い方しましょうよ!」

「すまんな僕はリアリストなんだ。」

「それ多分意味違いますよ...。」


__そしてそれは始まった。


「うぉぉぉぉぉぉ!好きだァァァ!付き合ってくださいー‼」

「っ//喜んで!」


パチパチと拍手が響きわたる。こんな場のノリと空気で即決してしまっていいのだろうか?と疑問に思っていると、次の告白者が相手を指名していた。それは__


「紫電さん!!一目惚れで、なんかもう全部が好きです!俺と付き合ってくれませんかー?」

と男が言う。”一目惚れ”言ってしまえば僕もそうだ。スポットライトが彼女を照らし全校生徒が固唾を飲み注目する。渚さんは反応に困っていたが意を決した表情でマイクを受け取ると、


「ごめんなさい、お気持ちはうれしいのですがいきなり告白されても私はあなたの事まだ全然知りませんし、申し訳ないのですがお付き合いはし兼ねます。」


「そこをなんとか_」

それでも男は食い下がる。しかし、この空気を覆す物語のような魔法は起きそうにもない。先ほどまでの“青春”というある種免罪符のような空気はもうどこにもない。


その場のすべての人が呆気にとられているなか彼女は颯爽と踵を返し、人前から姿を眩ませた。




______


「いきなり何かと思えば知らない方から告白されるなんてびっくりしました。生きた心地がしないです。」


ひょこんと僕のそばに現れた渚さんはそんなことを言う。心臓に悪いからいきなり現れるのは正直勘弁してほしい。


「それだけこの学校で注目されてるってことだろ。まー流石にこの後告白してくる図太いやつはいないだろうな。」


「...だといいんですけどね、。正直人の目に晒されるのってあまり慣れなくて苦手なんですよね。」


「それは意外だな。てっきり大勢の人の目に晒されてきただろうから嫌でも慣れてそうな気がしていたのに。」


「そんなことないです!圭君が思う程私は完璧な人間じゃないですよ?」


「..ふーん、なるほどなぁ。そういやこの後はなんかあるんだっけ?」


「この後は_」




それから僕らは夢のようなひとときを過ごした。



キャンプファイヤーを前に他愛もない話もしたし、一緒に踊ったりもした。



そんな幸せな時は刹那、それでいて永遠に続くかのようにも思えた。しかし僕の中で蠢くソレが顔を出す。


「じゃあ、僕らもそろそろお開きにしますか。」


「そうですね、文化祭を圭くんと過ごせてとても楽しかったです。ところでその、あの__」


「ん、渚さんどうかした?ちょっと眠くてあんまりよく聞き取れなかったんだけど、。」


「いえ、ですから...私__、」

あぁ、ダメだ。意識を保っていられない。


「すまない僕ちょっと寝る...わ...。」

と言い終わる前に意識がプツリと途切れその場に倒れ込んでしまう。はぁ、つくづく僕は情けない。


「け、圭くん大丈夫ですか?!え、え、一体どうしたらよいのでしょうか!?」


急に彼がその場で倒れ込む。眠いと言っていたし様子を見てもただ寝ているよう...


ですが


「もしもの事があったらいけませんし念の為救急車を呼ばなくては。」


程なくして到着した救急車に運ばれて、ただの寝不足による気絶であると知るのは翌日になってからの話である。


_________


「あれは圭?」

ふと目をやると誰かが救急車で運ばれているところが窺える。隣に居るのは紫電 渚?


「もしかして__」

もしかしたら圭はまた無理をして体悪化させたんじゃ...なんて嫌な考えが頭を巡る。1度思いついてしまったものはどんどん影を伸ばす。それがただの憶測であったとしても。


私はおばさんから圭が倒れたことを聞き(やっぱり)、すぐさま病室へ赴く。


「心配だよ、圭。これ以上何も無いといいんだけど。」


あの日、ゴールデンウィークに彼から告げられた話。悲しい、辛いという感情より先にどうして圭が、よりにもよってなんで圭だったんだろうという悔しさの方が込み上げてきた。彼と共に歩むはずだった未来は、そこにはもうない。


______


「圭!大丈夫?!」

乱れた呼吸が治まらないまま私は語りかける。そこにはあの女_紫電 渚がいた。


「今は安定しているみたいです。寝かせてあげましょう。」

確かこの人は圭くんの幼なじみの...葵さんだったはず。


「...わかった。ちょっと外で話そう。」

私は凄い顔して言ったんだろうなと自分でも思う。


「...わかりました。」

怒気が篭った声で言われて私はそう言うことしか出来なかった。























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