第12話 憂鬱な試験日和
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あれから数日、僕は今日も渚さんと放課後勉強会をしていた。
「あ、圭君この問題間違えてますよ!ここはこうして...」
あぁ、渚さんの顔が近い。それになんかいい匂いがするような…?
「って聞いてるんですか?も~。しっかりしてくださいよね、もうテストまでそんなにないんですから!」
「すまん、そうだな。しっかりしないとな。約束もあるし、気を引き締めて頑張るよ。」
”約束”___僕がこの中間テストで全教科平均点を越えたら学園祭を一緒に回るというものだ。
「そうですよ、約束...。しっかり果たしてくださいね。」
「分かってる、善処するよ。」
―――そうして数日過ぎていった。
「明日からテストだよ~!圭はちゃんと対策したの?」
「あぁ、それなりにはな。葵の方はどうなんだ?」
「ん~私もぼちぼちかなぁ。まだ分かんないところとかあるけど、正直なんとかなるんじゃないかな?」
「お前はそれでいいのかよ...。」
まったくもって不安材料しかないのだが。
「勉強の話なんかより、今年の夏休みはどうしよっか?何かしたいことでもある?」
「僕ら学生の本分は勉強のはずなんだけどなぁ。にしても夏休みか。何かといつもやってるから特段やりたいことも思いつかないな。」
「ま~なんか考えておいてよ!私は圭がしたいことならなんでもするからさ。」
「分かった。何か考えておくよ。」
そういって僕らはそれぞれのクラスに向かっていった。
__にしても相変わらず授業は退屈だ。毎回こんなに面白くないことを聞いて何が楽しいのだろうか...。さっき葵に学生はなんたらと説教じみたことを言った気がするがそんなことよりこの時間をどう切り抜けるかということが先決だな。
とりあえず保健室に行く体でサボろう。それがいい。
「あの、腹痛がひどいので保健室行きます。」
そう言って足早に教室を出る。向かう先はいつものあの場所だ。
屋上に行くと解放感に包まれた。少し暑いが心地よい風が吹くので絶好の昼寝日和だ。
「またお前か、宵宮 圭。」
「そういうお前こそ何でいるんだよ紫電 澪。僕がここに来るのを見計らったように来てないか?」
「おやおや、そんなことはないね。ボクがここに来るのが君と被るのは偶々だよ。」
と本人は言ってるが果たしてそうなのだろうか?彼女は”暇つぶし”という名目で時折紫電 渚と入れ替わっているらしいがその日に限って僕と屋上で会う気がする。
「そういえば最近、渚とよく勉強会をしているらしいじゃないか。進捗はどうなんだ?」
「そうだな、渚さんとは放課後に勉強させてもらってるよ。そしてその進捗って言葉が何のことを指してるかはわからんな。」
「んむ?そうか?言葉通りの意味だと思うんだが。君は渚のことが好きなんだろう?だから君のその恋路の話だよ。」
「え、ちょっ、は?なんでそう話になるんだよ!おかしいだろ⁉」
何故僕が渚さんのことが好きであることをコイツが知っているんだ?
「何故知ってるのか、という顔をしているが言わせてもらうと君の顔に書いてあるぞ、結構わかりやすく。」
…どうやら僕はポーカーフェイスが下手らしい。バレバレのようだ。
「まぁ、ほかの男ならまだしも君なら安心して妹を任せられそうだよ。…だからと言って簡単には上げないけど?」
「分かってるよそんなこと。大体あの人と僕とじゃ全然釣り合わないし、それに僕は...。」
ダメだ、葵と約束したんだ。病気を理由に恋愛をあきらめちゃいけないって。でも、本当にそれでいいのか、それが正しいと胸を張って言えるのか...グルグルと頭の中を巡って負の連鎖に囚われそうになる_____
「ボクはそうは思わないけどね。お似合い、ではあるんじゃないか?ま、渚にはボクが一番ふさわしいのに変わりないがな。」
「そ、そうなのか?でも、お前の言葉を僕はどこまで信用していいかわからないからな。」
「はぁ、この前助けてやったのにそう言われると大分萎える。そこの判断は君に任せるよ。君と話すのはまぁ、少しくらいは退屈しのぎになるな。」
「へいへいそりゃどーも。そろそろ教室戻っといた方がいいだろ?渚は優等生の鑑みたいなやつなんだし、不信感を抱かれないか?」
「…それもそうか。それじゃボクは戻るとするよ、君もサボりは大概にしておくように、と一つ忠告をしておこう。」
「ご忠告ありがとさん。」
やっと解放された。あいつの暇つぶしに付き合うのは毎回疲れる。ようやく一人ゆっくりできる、とそう思ってた時
「おい、屋上にだれかいるな?今は授業中だぞ、サボりも大概にしろ!」
と見回りの先生にバレてしまった。まったくツイてないな。
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明日からテストだと言うのに反省文やらなんやらで放課後まで時間を食ってしまった。今日は勉強会はないらしい。というのも渚さんからの提案で
『テスト前日はあまり追い込まずに当日に向けて英気を養うのが最も効果的です!』
ということらしい。なるほど、僕はいつも一夜漬けで何とかしていたからこの発想はなかったな。でも、今回はだいぶ前からしっかりと対策してきているので何とかなるだろ。
__テスト前最後の夜が明け、中間試験が始まった。
テスト一日目当日、天気は生憎の雨、というか雷雨。え、めちゃくちゃ雷なってるんですけど、普通に登校とか頭おかしいでしょ、学校は何考えてるんだ?
最初の時間は僕の苦手な数学。朝からだいぶ気持ちが沈んでいたけど問題を見て愕然としてしまう。
「...。いやこれ出来なくはないけど、普通にめんどくさい問題しかないじゃねぇか!!」
―――なんて憂鬱な始まりなんだろう。
でも、僕には渚さんとの”約束”がある。それを頼りにやるしかない。そう決意を固め、僕はテストに挑むことにしたのだった。
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