第11話 廻り始める歯車


_私は圭の秘密を知ってしまった。それは、彼の寿命が残り少ないというものだった。でも、私がすることは変わらない。


「圭おはよ~!」


GWも終わり、いつもの日常がそこにあった。


「あぁ、おはよう。もう中間テストか。」


「そうだね、ってそっか!もうテスト⁉」


二週間後に中間試験を控えた僕たちはそんな会話をしていた。


「そろそろちゃんと対策はじめないとな」


「べ、勉強の話はよそうよ。ね、圭?」


「お前昔は勉強できたじゃないか」


「うるさい、過去は過去、今は今なの!出来ないものはできないの‼」

 …得意げに言うようなことでもない気がするが。


「赤点は取らないようにほどほどにしとけよ。」

 …という僕も人の事を言えないのだが。


「圭だって人のこと言えないでしょ?ちゃんとやりなよ!!」

やはり見抜かれていたようだ、これだから葵の事は侮れない。


「そうだな、ちゃんとやるようにするよ。」

と言葉を添えておく。


_____________


「おっ圭おは~。今日からテスト週間だぜ~。」


「なんだ嶺二か、朝から暑苦しいな。」


「なんだとはなんだ!このクラスじゃ俺くらいしか友達いないだろ、お前。」


「うぐっ、それを言うのは友達なのか?僕にはお前が友達であるかすら怪しいと思うんだが。」


「おいおいそりゃねーよ...って、え、俺たち友達?違うの?」

 訳の分からない戯言をぬかす嶺二を放っておいて渚さんの方をチラリと見る。

 _瞬間、目が合ったような気がした。思わず目を逸らしてしまった。


「にしても最近かなり暑いな、まだ五月なのに、これじゃ夏が思いやられる。」


「確かに暑いなぁ、記録的猛暑だっけか?夏休みとか、お前はどうせ咲坂さんと遊ぶんだろ?まったく羨ましい限りだぜ。」


「どうだろうな?まぁいつも通りならそんな感じだな。」


なんだかんだテスト期間に入ってしまったが結局渚さんとは遊びに行けていないままだ。ピロン!と僕の携帯が鳴った、渚さんからだ。


『放課後勉強会、とかいかがでしょうか?嫌でしたらその、無理にとは言いませんのでお気を悪くしないでくださいね?』


同じクラスにいるのに直接じゃなくてlineで送ってくるだなんて...。

まるで二人の秘密と言わんばかりのその行動になんだか少し照れくさい。


「なんだ、圭。スマホ見てニヤニヤするとか趣味悪いな。俺にもみせてくr_」


「いや、なんでもない。そしてお前に個人情報は開示しない!以上」

どうやら顔に出てたようだ、気を付けよう。


____________


そんなこんなで下らない話をしていると放課後になった。


ちなみに葵には放課後居残ってテスト勉強するから先に帰るよう言っておいた。


「勉強会に付き合ってくださるのですね、圭君!」


「んまぁ、この前遊びに行ってやれなかったしな。」


「そのことでしたらお気になさらなくていいのに!」

 そういって渚さんは微笑んだ。天使かな?この子すごく可愛いんだけど。


「テストが終われば学園祭もありますし頑張りましょうね!それでは勉強会、始めましょうか。」

そういって渚さんはノートと筆箱を取り出した。慌てて僕も取り出そうとするが_


「そういえば僕、筆箱家に忘れたんだった。」


「も~圭君は何しに学校来ているんですか?」

 と若干呆れ気味に渚さんが呟く。そんな姿も愛おしい。


「...ペン一本貸してくれるか?」


「分かりました、どうぞ。私のお気に入りの一本です。」


「そんなんじゃなくてもいいのに。ま、ありがたく使わせてもらうよ。」


__静かな教室にカリカリ、とシャープペンシルの音だけが響いていく。


「あの...」

「なぁ...」


二人、声が重なる。なんというタイミング。


「先、いいぞ。」


「いえ、大した内容ではないので圭君のほうからどうぞ。」


「そうか。なら俺からいかせてもらうよ。このテストで全教科平均点越えたらご褒美とかにしないか?」


「平均点って...。誰でも行けると思いますよ、ちゃんと勉強すれば。」


「悪いな、僕は勉強はあまり得意じゃないんだ。」


「圭君が頑張ってくれるならご褒美考えますよ。」


「そうか、それじゃ頼む。そういえば渚さんはどんな要件だったんだ?」


「それは、その...。」

顔を赤くしてもじもじとしている。なんか僕可笑しなこといったか?そう思っていると、


「テストが無事に終わったら学園祭を一緒に回って欲しいな、なんて思ったりしたんです。そ、それだけです。」

 渚さんは言い終わる前に顔を背けてしまった。


「えーと、じゃあそれをご褒美にしてくれないか?それなら勉強も今以上に捗る。」


「本当ですか⁉私と回るのが嫌でなければぜひご一緒したいです!じゃあ...”約束”ですよ?」


「分かった。ちゃんと平均点越えれるように頑張るよ。」


「どうせならもっと上を目指してくださいよ~。私とともに高みを目指しませんか?」


「いやいや、僕には平均点越えるくらいが関の山だよ。...というか渚さんキャラぶれてね?いつもそんなんだっけ?」


「っ⁉ち、ちがうの。今のは家での癖...というかなんというか…。あ、いえ、なんでもないです!忘れてください。あんまりからかわないでください圭君。」


「ごめんって、にしてもそっちの渚さんも別にいいと思うけどな?まぁどちらにせよ、まずは”勉強”だな。」


「圭君はまたそうやって…。そうですよ!今は勉強です⁉目標達成しないとご褒美なしですからね。」



__いつもと少し違う渚さんの一面が垣間見えたところで僕らは勉強に戻った。最近渚さんの様子がなんだか変な気がする。


 

 僕のこの不釣り合いな想いはきっと届かないのだろうなぁ、とそう思う日常が少しだけ変わり始めたようなそんな気がした__

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