第7話 交差する想い、終わりの片鱗。
「圭、おはよ〜」
「あぁ、おはよう。」
...あれから解決策も見えないまま水曜日になってしまった。タイムリミットは今週の土曜日なのでもう残り少ない。
「んんー。浮かない顔してるね、どうかしたの?」
「いや、少し考えごとを。」
「私はもう週末が楽しみで楽しみで仕方ないよ〜!!今年はどこに旅行するのかなー?」
「5月の割には暑いし、あんまし暑くない所がいいな。」
「じゃあ、長野とか?北海道もいいね!」
「要検討だな。」
さて、どうしたものか。旅行を短めにしてもらう、とか?一緒に連れてってしまうとか?うーむ、イマイチいい案が浮かばん。
__そんな会話をしていると学校に着いた。
「それじゃ、また放課後ね、圭!」
「あぁ、また放課後。」
僕らは別れてそれぞれのクラスに入っていったのだが、
「なぁ、嶺二。視線が痛いんだが、僕また何かしたか?」
クラス男子の視線という視線が教室に入るや否や僕に向かってきていた。
「視線が全てを物語ってるだろ?身に覚え、あんだろ?」
嶺二を含めたクラス男子の視線が痛い。
「いや、知らんぞ。僕が何したって言うんだよ!」
「お前が、この前雨が降った日。紫電さんと相合傘してる所を見たっていう目撃情報があんだけど」
「いや、見間違いだろ。僕が渚さんとそんな仲に見えるか?」
「あーなんだ、見間違いか。そっかそっか....とはならんでしょうが!!え、何?″渚さん″?なんでそんなに親しげなの?」
「あーいや、ミスっただけだ。他意はないよ。大体誰がそんなこと言ってるんだ?」
「浅見さんが見たらしくてそのことについて紫電さんから直接聞いたらしいけど?」
_浅見 結花 。 渚さんとよく雑談している同じクラスの女子だ。
「で、本人はなんと?」
『えへへ、見られちゃいましたか?実は__』
「やめてくれキモイから、お前のCVで再生しないで。わかったから、した、しました、はい。」
「何を、したんだね?」
「........あ、相合傘」
「誰と、したんだね?」
「紫電 渚さんと、です。」
どうやら見られてたらしい、クラスの話題はこの話で持ち切りだった。
そんなこんなでとてもじゃないが居づらい教室をでて屋上でサボっていると、
「よう、先客。おサボりか、感心しないぞ?」
と、紫電 渚の双子の姉 紫電 澪が屋上に来た。
「...アンタだって人のこと言えないだろ?それに、浅見にバラしたのはやっぱアンタか。」
「まぁ、正解だな。ボクは何も君に意地悪がしたいわけじゃない。強いて言うなら君たちの為って所かな?」
「何言ってんのかさっぱり分からんが、こちとら迷惑しか掛けられてないって。」
「それはどうかな?なんてまだ言ってもわかんないか。そんな事より悩み中なんだろう?」
ん?なんでそれをこいつが知っているんだ?僕の顔にでもそんなことがかいてあったのだろうか?
「おや?どうして不思議そうな顔をしているんだい?顔に出てるじゃないか?どうしよ〜って。」
....?僕とこいつはそこまで関わりがなかったはず。それでもやっぱり分かるものなのか?
「まぁ、そうなんだよ。少し悩み事があって。」
「聞いてやる、言ってみな?」
「実は__」
これまでの経緯をざっくりと紫電 澪に話した。
「なるほどな、それで渚に断りづらいし、あの幼なじみとの方も断りづらくて困っている、と。」
「そんなところだ。何かいい案はあるか?」
「幼なじみの方はどうこうできるもんじゃないとボクは考えるかな。さすれば、渚との約束をどうにかするべきだ。」
「でも、さすがに断りづらいんだよなぁ。」
「誰が諦めろと言った?日付をずらしてもらえって話だ。ボクからもゴールデンウィークは人が多いとか何とか理由つけておく。」
「その手があったか、ちなみに代替案はいつがいいのだろうか。」
「そこは自分で考えて行動してくれ、ボクはそこまで甘くないからな。」
「助かったよ。」
「素直に感謝か、まぁ悪くないな。」
そう言い残して彼女は教室に戻っていった。
僕は早速携帯を取り出してメッセージを送っていた。
「すまん、GWは少し厳しいから他の日でもいいか?」
『...そうですよね。分かりました、私は圭くんとの予定ならいつでも大丈夫なのでぜひお誘いください!』
と、すぐに返事が返ってきた。というか、入れ替わっている今彼女はどこにいるんだろうか?紫電 澪はどこの高校に通っているのだろうか?今度聞いてみることにしよう。
________
「楽しみすぎて一睡も出来なかった...。」
「小学生の遠足か、お前は。」
「あらあら、ほんとに仲良いわね〜あなた達。」
ついにゴールデンウィークもとい二家族旅行が始まった。今年は、静岡に行くらしい。なんでも富士山から駿河湾まで色々とあるようなのだ。
「静岡か〜私行ったことないかも?富士山のところだよね?」
「そうだな、ただその表現は山梨県民に怒られるぞ。」
「しらすに桜エビ、深海魚バーガー、鰹も取れるんだって〜!!」
「食いもんしか頭にないのかよ!!」
「葵ちゃんはグルメだね〜、おばさんも沢山食べ歩きしたいわ〜」
うちの母親もそっちサイドかよ。そして到着した僕らは旅館に荷物を置き、自由行動となった。
「ねぇ、圭。」
「何だ?急にかしこまって。」
「....大事な話があるの。だから、今日の夜8時、旅館の玄関前に来て?」
と葵からなんやら深刻そうな顔で告げられる。
「わかった、8時な。覚えてたら行く。」
「...!?ちゃんと来てよ!!」
「分かってるって。」
__僕らの関係は良くか悪くか変わろうとしている。分かっていたはずなのにこの頃の僕にはまだ″ソレ″が忍び寄ってきていることを知る由もなかった。
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