第3話 嵐は前触れもなく突然に?
「よ〜圭、おつかれさん!サボってたのにすごく疲れてんなお前。」
「あぁ、なんか変なのに絡まれてな。全然休めなかった。」
「あ、そうだ、担任のハゲから伝言預かってんだよ。お前がこのクラスの学級委員だとよ。」
「....。.......。.....へ?なぜ僕が学級委員???」
おかしい。普段からこういう役職には選ばれぬように隅にひっそりしていたというのに。これはきっと『誰かが仕組んだに違いない。』そう思っていると、
「なんでも、紫電さんの推薦だったからなぁ。男子が相当お前を羨み、そして妬んでいたぞ。俺もその1人だ!ここでしねぇ圭〜!」
そんな意味不明なことをのたうち回る嶺二を放っておきながらも、先程の『紫電さんの推薦』という言葉について考えていた。....クッあの女め、僕が惚れた少女と似ても似つかぬその人の名は__紫電 澪。
「はぁ〜もう、ますますめんどくさいことになったな。僕の平穏な日常はもうどこにもないな。」
そう、諦めざるを得ない状況になってしまった。
「なぁ、圭。いや圭様、宜しければ私めに可愛い女の子を紹介しt...」
嶺二が無粋なことを言おうとしたその時、隣のクラスから騒音機がやって来た。
「け〜い!あ、いたいた!!もう放課後でしょ?ほら早く約束のお店いこうよ〜!!は〜や〜く〜!」
「わ、わかったから。そんな大声で騒がないでくれ、恥ずかしいし視線が痛い。」
「ん?私にとっては圭以外の人なんて皆モブなんだから、気にしないで大丈夫だって!それよりほら、行こ?」
「ん、ああ。」
嶺二がこちらをじっと見つめてくる。その視線の意味は、おそらく『死ね圭』だろう。すまんな、嶺二。僕はもう既に死にそうだ。
周りの視線が痛い中、葵に連れられて約束していた駅前のケーキ屋まで来ていた。
「わぁ!全部とっても美味しそう〜。ねね!これ全部食べてもいいの?もちろん圭の奢りで」
「などと意味不明な供述を繰り返しており...」
「ちょっと!私の話聞いてるの?そういう態度取るなら私だって、。私だって!!」
僕に対してどんな制裁が下されるのか気になり、わくわくしながら続きを待った。
「″私だって″どうするんだ?」
「私だって__。」
そう葵が言いかけた時程なくして彼女は現れた。
「まぁ、こんなところで会うなんて奇遇ですね、宵宮君。」
「そうだな、紫電さんもオープンしたばっかのこの店に来てみたかったのか?」
「というと、宵宮君もそうなんですか?私甘いものには目がなくて...」
....。普通の会話をしているはずだ、しかし妙な違和感がある。なるほどそうか、横からの視線が痛いということか、理解したわ、うん。
「そちらの方は?″圭″のお知り合いの方ですか?」
なんだろうすごく怖い、怒気のこもったような声音で葵が訊ねた。
「えぇ、″同じクラス″の″同じ委員会″の紫電 渚と申します。以後、お見知り置きを。」
この2人油と水みたいに反発してるようだがそもそも何かがおかしい。
「第一にどうしてそんなにバチバチしてるんだよ」
「圭は黙ってて。」
「宵宮くん少し待っててくださいね。」
と気圧されてしまい僕は押し黙ってしまった。それからこの状況の違和感について考えていると1つの結論が思いついた。
__ここにいる紫電 渚は紫電渚ではない。__
というのも、おそらくここにいる(自称)紫電 渚は、先程屋上で出会った紫電 澪の方だろう。そして、こいつは今この状況を楽しんでやがる。そこまで思い至って、
「まさか、お前紫電 渚じゃなくて_」
と言いかけた所で、制止される。
「それ以上はダメ。」
僕の唇に指を添えながら彼女はそう言った。その姿に思わずドキりとしてしまう。
そうだ、いくら性格が違えど容姿はそっくりなのだ。だから、そうゆうことをされるとときめいてしまう。
「んで、圭はいつまでそうされてるつもりなの?」
この状況で最も恐ろしい所謂″幼なじみ″とかいう奴が鬼のような形相でこちらを見ていた。これはまずい、そう思った時既に遅し。
「宵宮君は、私とこの、″幼なじみ″さんのどっちがいいんですか?」
紫電 渚__に扮する紫電 澪が爆弾発言をした。
「私でしょ?私だよね!圭!!」
「私ですよね?宵宮君?」
あぁ、僕のために可愛らしい少女が二人言い争ってる....。この光景を見て思うことはただ1つ、うん、やっぱ周りの視線が痛いや。もうやめてくれよ、自分が惨めになってくる。そんな僕の思いも虚しくどんどんヒートアップしていく。
「た、頼むからもうやめてくれよ。どっちも大切ってことでなんとかならないですかね?」
心中泣きながらの懇願を受けて引いてくれるかと思ったのだが、
「…意気地なし。」
「それには同感ですね。まぁ、今日はこの辺りにしておきます。それではまた明日、宵宮君。」
__こうして前触れのない嵐が去っていったのも束の間、僕が望んでいた平穏な生活はもうどこにもないのだと思い知らされることになるのであった...
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