ウワバミ

「いやはや、参りました。流石は与太郎さんです。私はまだ修行が足りませんね」

【座布団一枚獲得!総座布団数89】

「タイタイよ、負けはしたが、なかなか良い勝負であったぞ」

「師匠、ありがとうございます」

「それでは、そろそろ出かけるとするか」

 コンピカリは花筏との利き酒勝負に向かった。与太郎達もここにいても仕方がない。後を付いて行く。

 しばらく歩いて試合会場となる造り居酒屋に着いた。道中、コンピカリはあっちにフラフラ、こっちにフラフラで危なっかしい。立派な千鳥足である。だが、肥溜めには落ちそうで落ちなかった。

「大丈夫かしらね」

 キセガワは心配になったが、コンピカリは意に介さない。

「ガハハハ、わしは酔えば酔うほど面白くなるのだよ」

 対戦相手の花筏は、既に待っていた。コンピカリの到着をもって、勝負が始まる。その様子を与太郎は固唾を飲んで見守った。

「おいおい、本当に利き酒か、これは?大酒飲み大会の間違いじゃないのか?」

 利き酒というと、お猪口で少しずつ味を見るイメージであったが、二人とも一升瓶でラッパ飲みしていく。

「力士の利き酒勝負は、一升飲んで味を判定するんです」

 タイタイが説明してくれた。

「ねえ、本当に大丈夫?」

 キセガワの勘定では、二人とも既に三十升近く飲んでいる。

「平気だと思いますよ。ここに来る前にも、三十升飲んでますから」

「全部で六十升!?」

 すると、コンピカリの様子がおかしくなってきた。顔が青白くなり、目が鋭くなる。体もやけに膨らんできた。

「おいおい、何か起こってるんじゃないのか」

「これからが本番です。師匠が本気を出してきています」

 ビリビリ、ビリビリ。コンピカリの巨体が尋常でないぐらい膨れ上がって、着ていた着物が破けた。口は大きく避け、赤い舌が見えた。

「ぐわはは、花筏関よ、やりおるのう。じゃが、わしは負けはせぬ。なんのこれしき、グオオーー!!」

「ひえ〜、化物!」

 花筏はコンピカリの恐ろしい姿を見て逃げ出した。なんとコンピカリは、巨大なウワバミの姿に変身した!

「うい〜、酔っ払った。おや、ここに酒のシメに良さそうな、バカと花魁がいる」

 あーんと大きな口を開けて、与太郎とキセガワを飲み込んでしまった!

「うわっ、ここはどこだ!?」

「どうやら私達、ウワバミの胃袋の中だわ」

「ああ〜、師匠が制御が効かなくなってしまった」

 ついでにタイタイも飲み込まれていた。

「どうするんだよ」

「こうなったら、師匠と妖喜利バトルをして勝つしかありません」

 タイタイはウワバミの胃袋の中にぶら下がっている、紐のようなものを引っ張った。

「誰じゃ〜、腹の中で悪さをするのは」

「師匠〜、妖喜利タイムですよ〜!」

 コンピカリとの妖喜利バトルだ!


【妖喜利バトル】

 腹の中のキセガワよ。あう〜、まさかこんな所で妖喜利やるなんてね。酒臭いったらありゃしない。とっととコンピカリを倒して、脱出するわよ!良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 今回のテーマは「酔えば酔うほど」。「酔えば酔うほど強くなる」みたいに、「◯◯すれば◯◯するほど、◯◯になる」と言ってください。私が「何ですか」と聞きますから、更に一言続けてください。

(与太郎の回答)

「年経れば年経るほど、幼稚になる」

「何ですか」

「愚かな地球人」

 …いや、その愚かさの筆頭があんただから。


※ウワバミ…ウワバミという演目があるようだが未確認である。他にウワバミが出て来る噺は「夏の医者」「そば清」「明石飛脚」など。

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