悋気の火の玉
「へっ、思わず笑っちまったぜ。ここを通ってよろしい」
妖怪・火焔太鼓はどこかへ去って行った。
【座布団一枚獲得!総座布団数73】
宮殿に入って行った与太郎。中は広かった。片っ端から扉を開けてみるが、なかなかキセガワは見つからない。
「くそ〜、どこにいるんだ」
さまよっているうちに、立派な扉を見つけた。
「もしかしてここか?」
ガバッと開けると、一頭の太ったラクダがいた。何かが焼けるような、いい香りがする。
「見つけたぞ、腹黒ラクダめ。ちょっと見ないうちにいやに太りやがったな」
「誰じゃ、お主は。マヌケ面しおって」
「キセガワさんをどこにやった!」
「誰じゃ、それは」
「とぼけるない!お前が連れ込んだ花魁のお嬢さんだい」
「花魁!今度は花魁か!キイーッ、悔しい」
ラクダの周りに、ボッ、ボッ、ボッと火の玉が浮かんだ。火の玉はゆら〜っと飛んでくる。
「ひ、人魂!?」
「これは悋気の火の玉じゃ」
「悋気の火の玉?何だい、それは」
「ヤキモチを焼くと出て来る火の玉のことじゃ。だからこうして、火の玉で餅を焼いて食っておる」
太ったラクダは、ムシャムシャと餅を食べた。
「お前、ラクダオウではないな?」
「私はラクダオウの妻、ラクダジョオウじゃ。我が夫のラクダオウは、私というものがありながら、女と見ると見境なく手を付ける。その度に私はヤキモチを焼くものだから、餅を食べ過ぎて太ってしまったのよ」
「そりゃあ、気の毒だったな。それより、キセガワさんっていう俺の女が、ラクダオウにここに連れ込まれたんだ。奴の居場所を知らないか?」
「お主のようなマヌケ面に花魁が惚れるとは思えぬが、それなら、こう行ってああ行ってそう行けば、ラクダオウの部屋に着く」
「そうか、ありがとな。こう行ってああ行ってそう行くんだな」
「じゃが、お主が行ったところで、女はお主のことを忘れておるじゃろう」
「何だって?」
「女はラクダオウの催眠術にかかって、魂を抜かれたような状態になっておる。女の魂を取り戻すには、反魂香を使うことじゃが」
「反魂香?それはどこにあるんだ」
「反魂香はいたりきたりが守っておる。いたりきたりがいる部屋には、ああ行ってこう行ってそう行けば着く」
「ええと、どう行くんだい?混乱してきちまった」
「良かったら私が案内してやろう。じゃがその前に」
「やっぱり、アレをやるのか」
ラクダジョオウとの妖喜利バトルだ!
【妖喜利バトル】
宮殿のどこかにいるキセガワよ。ちょっと、与太郎の奴!いつから私があんたの女になったのよ。早く助けてくれないと文句の一つも言えないわね。その前に妖喜利バトルだわ。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
今回の問題は「いいラクダ、悪いラクダ」です。皆さん「いい◯◯は、◯◯。悪い◯◯は、◯◯」という二段落ちを作ってください。◯◯に入るものは何でもいいです。
(与太郎の回答)
「いい先生は、生徒のやる気を出させる。悪い先生は、生徒の親から賄賂を出させる」
…やる気も賄賂もない与太郎。
※悋気の火の玉…古典落語の演目。
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