らくだ

「ああ、面白かった。生きてれば、こうやって妖喜利出来るんだなあ」

 鰻はヌルヌルと逃げ出していき、前の川にポチャンと飛び込んだ。

【座布団一枚獲得!総座布団数71】

 結局、鰻を食べれずじまいだった与太郎である。やけ酒をあおって、訳の分からないままその日は宿に入った。

「さあ、出発よ。今日中に次の町まで行かないとね」

 翌朝早く出立する。キセガワが急いでいるのには理由があった。何でも宿の者によれば、この先ちょっとした砂漠を越えて行かねばならないという。

「砂漠の渡しがあるみたいだから、心配はないと思うけど、早目に行っておきましょう」

 どうせ鳥取砂丘のようなものだろうと、高を括っていた与太郎であったが、現地まで行って驚いた。

「こりゃあ、雄大だな」

 見渡す限りの砂漠である。観光会館も日本海も見えない。

 早速、砂漠の渡しを頼もうとしたキセガワであったが。

「え、嘘!?もうやってないの?」

 なんと数日前に急に砂漠の渡しがなくなったという。

「どういうことなの、これじゃ先に進めないじゃない」

 困っていると、声をかけてきた者がいた。

「お嬢さん、お嬢さん。良かったら、私が砂漠を渡してあげましょう」

 見ると、砂からモグラが顔を出している。

「あんた、モグラじゃないの。どうやって渡すのよ」

「私はモグリの砂漠の渡しでございます。ラクダがありますので、どうぞそちらにお乗りください」

 人が二人乗れる、立派なラクダがやって来た。

「モグリというのが少し気にかかるところではあるけれど、乗ってくしかなさそうね」

 二人はラクダに乗って砂漠を越えることにした。与太郎はラクダの背で上機嫌である。

「ああ、いいねえ。景色もいいし、ラクダの上ってのは快適だね」

 突然、ラクダが口を聞いた。

「ああ、そうだね。邪魔な奴さえいなければね」

「きゃ、ラクダが喋った!?」

「ククク、素敵な花魁のお嬢さん。バカは放っておいて、私と素敵な所へ行ってしまいましょう」

「こら、ラクダのくせに花魁に手を出すとは太え野郎だ。キセガワさんは俺とデート中なんだ」

「デ、デ、デート!?」

「邪魔者には砂漠の塵にでもなってもらいましょう」

 ラクダは器用にお尻を振って、与太郎だけを落とした。

「うぎゃっ」

「モグラよ、妖喜利の相手にでもなっておやりなさい」

「きゃー、助けてーっ」

 ラクダはキセガワを乗せたまま駆け出した!

「キセガワさん!」

「おっと、兄さんの相手はこっちだぜ」

 モグリのモグラと妖喜利バトルだ!


【妖喜利バトル】

 キセガワよ。このラクダ、何者?何か腹黒そうなんだけど。それより、妖喜利バトル行くわよっ。どうしてラクダに乗って猛スピードで遠去かりつつある私が状況を把握出来るかって?落語のリアリティを追求し過ぎるのはよくないわ。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 月の砂漠をラクダに乗って旅をするなんて、ロマンティックだわ。そこで皆さん、ロマンティックな会話を作ってください。何か一言言った後に、私が「ロマンティックだわ」と返しますから、更に一言続けてください。

(与太郎の回答)

「君が生まれた年のワインで乾杯しよう」

「ロマンティックだわ」

「横綱も同じ年に生まれたんだ」

 …単純な事実を述べただけで、一気にロマンティック崩壊。


 ※らくだ…古典落語の演目。内容は本編とは無関係。

 ※腹黒…笑点で腹黒キャラと言えば、六代目三遊亭円楽師匠。

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