後生鰻

「くだらない、くだらない。答えが実にくだらない。だが気に入ったぞ、与太郎とやら。なるほどエンチョが選んだだけのことはある。お主ならば、Dを倒せるかもしれぬな」

 オチャマルをやっつけた!

【座布団10枚獲得!総座布団数70】

「さらばだ、マヌケな人間よ。せいぜいラクゴの世界を楽しむことだ」

 オチャマルはどこかへ去って行った。

「ふう〜、なんとか倒せたか。手強い相手だった」

「でも、やったわ。元々マヌケだったけど、こっちに来てから与太郎のマヌケ度もぐんぐん上がってるっていうことね」

「褒められてんすかね」

 いずれにせよ、強敵を倒した与太郎。これで妖喜利六将軍も後二人である。その二人ともすぐに熾烈な戦いが始まるであろうが、ひとまず一服だ。町に戻って疲れを癒すことにした。

「オチャマルを倒したご褒美に今日は贅沢させてあげるわ」

 と言ってキセガワが選んだのは、鰻屋である。与太郎に鰻重を注文してくれた。

「お、いいねえ。やっぱり精を付けるにゃ、鰻が一番」

 通ぶってはいるが、与太郎はもちろん鰻など食べたことはない。せいぜいが鰻屋の前で匂いを嗅いでご飯を食べたぐらいである。

「鰻ってのは背開きと腹開きとあって。江戸っ子はやっぱり背開きですよ。武士の街ですからね、上方みたいに腹から裂くってのは、どうも縁起が悪くていけませんや」

「うんちくばかり言ってないで早く食べなさいよ」

 ここにも柳陰があったので、鰻の蒲焼きを肴に上機嫌のキセガワである。

「いやあね、鰻は大好物なんですよ、鰻は。そりゃあもう、鰻の腹から産まれたかったってぐらい、鰻は好物なんです」

 実は初めて食べる高級品に戸惑っているのである。鰻重を食べるのに何かややこしい作法か何かなかったかなと、頼りない記憶をまさぐっていた。

「鰻重ってのはね、こうやって箸の正しい持ち方をして、喉が詰まるといけないから温かいお茶を用意して、そうそう、まずは重箱の蓋を開けませんと」

 重箱の蓋を開けた与太郎は目が点になった。ほろ酔いでいい心持ちだったキセガワも、事の異様さに目を見張る。

「鰻重ってのは、実はまだ食ったことがないんですけど、動くものなんですかい?」

「普通は踊り食いにはしないものだけど」

 重箱の中にいたのは、まだ生きている鰻。その鰻が喋った。

「後生です、後生です。どうか食べないでください」

「食べるなったってね」

「後生ですから食べないでください。私ももっと生きたい。生きて妖喜利したいんです」

「したいって言ってるんだから、相手してあげる?」


【妖喜利バトル】

 いい心持ちが覚めちゃったキセガワよ。まったく、鰻まで妖喜利がしたいなんて。これも放生かしら?良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 助けた鰻が恩返しに来ました。しかし少し問題が。それは何?

(与太郎の回答)

 毎夜仲間を連れて来て一緒にお風呂に入ってくれる。

 …ヌルヌル、ヌルヌル。


※後生鰻…古典落語の演目。

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