愛宕山①
「やるねえ、兄さん」
【座布団一枚獲得!総座布団数9】
「ご武運をお祈りしてますぜ」
翌朝早く、愛宕山へ向けて出発する。昼前には麓に着いた。
「この分なら途中でお弁当を使って、日暮れまでには下山できるかしらね」
「へへ、何かピクニックみたいですね」
「遊びに行くんじゃないわよ。オチャマルを倒したらの話なんだから」
ドーン、ドーン。そのとき、愛宕山が噴火する激しい音が聞こえた。遠目にも座布団が舞っているのが見える。
「いずれにせよ、いつまでもここでこうして突っ立っているわけにはいかないわ。早く行きましょう」
とっとと登山道に入るキセガワである。与太郎も後を追いかける。
「あんた登山に慣れてないけど、大丈夫?」
「へへ、なんてことないですよ。東京にだって高尾山という立派な山があるんです。それに比べりゃこんな山」
与太郎は歌を歌いながら元気良く登っていく。
「白紙〜は〜白紙〜、カラス〜は〜カラス〜」
「ちょっと、全然場に合ってない」
しかし、しばらくするとへたばってしまった。
「ひい、ふう、待ってくださいよ〜」
「ちょっと、高尾山はどうしたのよ」
「そういや俺、高尾山は登ったことなかったです。登ったことがあるのは千歳烏山でした」
東京に千歳烏山という地名はあるが、山ではない。
それでもどうにかこうにか、火口付近まで辿り着いた。地面に座布団が散らばっている。
「まずはこれを回収しちゃいましょ」
そのとき、クエーッ、クエーッという声が空の方から聞こえてきた。
見上げると、背中に鳥の羽が生えた、全身を包帯でグルグル巻きにした人が降りてきた。
「な、何だ、これは!?」
「こいつは、ミイラ鳥だわ!」
「え、ミイラ取り?」
「ミイラ取りじゃなくて、ミイラ鳥。ミイラに鳥の羽が生えている、オチャマルの手下よ!」
「ケケケ、お二人さんよ、こっそり座布団を持って行こうなんて、そうは問屋が卸さないぜ。この俺と勝負してからにしな」
ミイラ鳥との妖喜利バトルだ!
【妖喜利バトル】
キセガワよ。やっぱりすんなりとは行かせてもらえないわね。ミイラだろうがミイラ鳥だろうが、邪魔する者は一人残らず笑わせてやるわ。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
九官鳥に言葉を覚えさせようと、「こんにちは」と言ったら、予想の斜め上の言葉が返ってきた!そのときの会話を作ってください。
(与太郎の回答)
「こんにちは」
「兄さんの幸福度は、アブラムシに次いで高いね」
…知能指数もそのくらいね。
※愛宕山…上方落語の演目。
※白紙は白紙…紙屑屋の中に出てくる歌。
※ミイラ鳥…木乃伊取りという演目がある。
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