狸の化寺

「ククク、その程度かな?若い人」

 御隠居は不適な笑みを浮かべた。

「あちゃー、ちょっといまいちだったかな」

 それでも座布団を取られることはあるまいと、高を括っていた与太郎であった。

 だが。

「ククク、それでは座布団全部頂きます」

 妖術・ジェノサイドが発動された!

【座布団全部没収!総座布団数0】

「そんなバカな!?今のは、ジェノサイド!?ということは、お前は!?」

「ククク、花魁のお嬢さん。ようやく私の正体に気付いたようだね。これでも若い頃は遊びの界隈では、ちょいと名前を知られてたんだが、やはり歳を取っても枯れてはいけないね」

 御隠居は正体を現した!骨と皮ばかりの体が、骸骨姿になって行く!

「お前は、オチャマル!」

 本物のオチャマルが現れた!

「ククク、座布団を返して欲しくば、愛宕山まで来るんだな。来れたら、だけどな。クックック」

 オチャマルの姿がぼやけて行く。それと同時に、お屋敷全体もぼやけて行った。

 完全にオチャマルが消えてしまうと、立派なお屋敷は、寂れた古寺に変わっていた!

「何だ!?俺達は、こんな所にいたのか?」

 愕然とする与太郎。綺麗な畳は破れてボロボロのものに変わっていた。障子は骨が折れて、風が吹き込み放題。天井に空いた大きな穴から、月が見えた。

「あの青いお茶は?あ、こいつはそのままだ。どうりでまずいと思った」

「やられたわ。どうやら私達はオチャマルの妖術で幻を見せられていたようね」

「するってえと、何かい?俺達、町に着いたんじゃなかったんですかい?ここで一晩明かせってことですかい?」

 天気はいいし、雨漏りの心配はないかと、気楽に構えた与太郎であったが。

「な、何すか、今の音。何かいるんですかい?」

 ガサゴソと、暗闇で何かが動き回る音がする。

「オチャマルの奴、飛んだお土産を残してってくれたみたいね」

 二人を取り囲むように、狸達が現れた!

「ヒッヒッヒ、うまそう、うまそう」

「座布団、なくなった、食うなら今」

「今夜、花魁鍋。ウヒェヒェ」

 狸達は気味悪く、舌舐めずりをした。

「どうやらここは狸の化寺のようだわね。普通なら、座布団を失って妖力がなくなった妖怪は、こいつらの餌食になるんでしょうけど、そうはいかないわよ!」

 狸達との妖喜利バトルが始まった!


【妖喜利バトル】

 キセガワよ。オチャマルジェノサイド、噂には聞いてたけど、凄い威力だわ。それより今は狸達を蹴散らさないと。妖喜利行くわよっ。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 狸の親子が人間を化かしに行こうとしています。ですが、父親の方はあまり気が乗らない様子。そこでこんな感じで狸の親子の会話を作ってください。

「父ちゃん、◯◯◯◯◯◯」

「やめとけ。◯◯◯◯◯◯」

(与太郎の回答)

「父ちゃん、人間に泥団子を食わせてやろうよ」

「やめとけ。最近はインフレで、泥団子も高いんだ」

 …泥まで世界経済の仕組みに巻き込まれちゃったのね。もう葉っぱのお金じゃ何も買えないわ。


※狸の化寺…上方落語の演目。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る