青菜
「ほっほっ、なかなかの腕前ですな。拙僧共はまだ修行が足らないようです」
【座布団一枚獲得!総座布団数20】
その夜、与太郎は僧侶達の遊びに巻き込まれて、朝まで妖喜利に付き合わされた。
翌朝、僧侶達に見送られて二人は寺を後にする。昼頃には次の町に到着した。
「ふぁあ〜、眠いなあ」
「ぼーっとして、スリにでも会わないようにね」
ひとまず腹拵えをしようと一軒の料理屋に入った。
「あら?この店、
キセガワが好物を発見して注文する。柳陰とは、みりんと焼酎を半々に混ぜた酒のようだ。
「あ〜、おいしい」
白い肌がほんのり上気して色っぽい。
「うん、うまいっすね。青菜炒めにぴったりだ」
「何でそんなもので飲んでるのよ。柳陰と言ったら、鯉の洗いでしょう」
与太郎には、飲めれば何でもいいのだ。
昼間から酒が入って、いい心持ちで店を出た。そのときである。ドンッと与太郎にぶつかって来た男がいた。男は謝りもせず、走って行こうとする。
「おわっ、気を付けろい!」
「ぼやっとしないで。スリかもしれないわよ」
与太郎が自分の懐を探ると、財布がない。
「俺の紙入れ!待ちやがれ、コンチクショウ!」
慌てて二人は追いかけて行く。有り難いことに、泥棒は何もないところで盛大にズッコケてくれたから、簡単に追い付いた。
「ひい〜、許してください」
「やい、マヌケな泥棒め。俺の紙入れ返しやがれ!」
「お返ししますから、ご勘弁を」
泥棒は何かを返そうとするのだが、その手は空である。
「あれ、ない!?」
「てやんでい!おめえ、すった紙入れをまた誰かにすられたな!?」
「ちょっと待ってよ。そんな暇はなかったわ。それより、あんた、お財布持ってたかしら?」
「あ、そういや俺、紙入れ持ってなかった」
自慢じゃないが与太郎は生まれてこの方、財布など持ったことはない。
「しかし、そそっかしい泥棒ね」
「実は私は見習いなんです」
「見習い?」
「はい。
「代を下りるごとにマヌケになって行くな」
「ああ、やっぱり私には泥棒は向いていないなあ。地道に座布団を貯めるしかないかあ」
「座布団?じゃあお前、座布団が欲しかったのか?」
「はい。盗めないとなると、手は一つしかありませんね」
天津飯は本性を現した!
【妖喜利バトル】
色っぽいキセガワよ。まだいい心持ちだけど、こうそそっかしくちゃいけないわ。それじゃ酔いも覚めないうちに、妖喜利バトル行ってみよ〜。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
ある家に空き巣に入った泥棒が目にした、驚くべき光景とは?
(与太郎の回答)
床一面がブロッコリーで覆われていた。
…ホラー!じゃ、ないわね。このお題は答えが色々出来そう。
※青菜…古典落語の演目。柳陰などが登場するが、ストーリーは本編のような内容ではない。
※赤坂炒飯…噺の枕に登場する泥棒の名前。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます