坊主の遊び

「おのれ、口惜しや」

 魔女コーラルをやっつけた!森の中が明るくなっていく。

【座布団三枚獲得!総座布団数19】

「やったね!でかしたわよ」

「あれ、キセガワさん?何でそんなところにいるんです」

 キセガワは木の上に登っていた。

 道も明るくなり、怖くなくなった二人は、しばらくして森を抜けた。

「ふ〜、やれやれ。もう森はこりごりでさ」

「とは言っても、まだ次の町には距離がありそうね」

 この辺まで来ると、キセガワも不案内である。ちょうど良く旅の坊さんが通りかかったので、道を尋ねることに。

 それによると、今日中に近くの町まで行くのは不可能だとのこと。ここから行った先にお寺があるので、そこに泊めてもらうのがいいということだった。

 夕暮れ近く、旅の坊さんの言った寺を見つけた。

「俺は寺に泊まるのなんて、気が進まねえなあ。夜になってなんか出たりしないか?」

「じゃあ、私だけ泊めてもらうからいいわよ。墓石の間ででも寝たら?ごめんくださ〜い」

「ちょっと待ってくれよ、俺も行くよ」

 坊さんが出て来て、快く泊めてくれることに。ささやかだが、食事にもありつけた。

「か〜、ありがてえ。やっぱり米の飯を食わねえってえと、腹が決まらねえなあ」

「それ、麦飯よ」

「へ、そうかい?滅多に米を食わねえもんで」

 和尚さんが出て来た。

「お食事はお気に召されましたかな、旅のお方」

「お、和尚さんだね。恩に着るよ。俺達には何にも出来ねえけど、何かしてやりたい気分だ。何なら太鼓持ちぐらいするよ。よっ、大和尚!今日も眩しいね、とくらあ。あ、お寺だから木魚持ちか?」

「一緒にいて恥ずかしいわよ」

「ははは、面白いお方ですな。今晩はごゆっくりお休みください。夜中に何か音がするかもしれませんが、寺のゆえ、夜はちと騒がしいこともあるやもしれません。どうか気になさらずにお休みくだされよ」

 和尚は障子を閉めて出て行った。

「何だ?変なこと言って行かなかったか?」

「嫌ね、お坊さん達がお経を上げてるとか、そういうことよ」

「夜中にお経なんか上げるのか?」

 不意に不安にさせられる二人であった。

 その夜、与太郎はふとした物音に目を覚ました。何やら人が集まって話すような声がする。ときどき、どっと笑い声も。

「や、やっぱり何か出たのか?」

「本堂の方から聞こえるわ。やっぱりお経じゃない?」

 キセガワも起きて花魁の姿に戻る。

「化け物が宴会してるとかじゃないだろうな?」

「見、見に行ってみたら?」

 怖いもの見たさで、そーっと部屋を抜け出す二人。恐る恐る本堂を覗き込むと、そこには。

「見〜た〜な〜」

「ギャー、出た〜!」

 腰を抜かした与太郎。

「お、お坊さん達!?何をしていらっしゃるの!?」

「フフフ、まさか坊主が夜な夜な集まってこんなことをしているとは、知れたら一大事。見られたからには、タダで返すわけにはいきません」

「お、俺は、食ってもうまくないぞお!?」

「しっかりしなさい!このお坊さん達は、夜中にこっそり妖喜利をしていたのよ」


【妖喜利バトル】

 キセガワよ。たとえ仏に仕える身と言っても、妖喜利には夢中になっちゃうわ。それじゃ問題、行ってみよ〜。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 お坊さんがこっそりやっていること

(与太郎の回答)

 ポケットに入れたまま洗濯してしまったお経の本を丁寧に乾かしている。

 …覚えてないからねえ。


 ※坊主の遊び…古典落語の演目。内容は本編とは全く異なる。

※太鼓持ち…幇間とも言う。遊郭などで客の機嫌を取って日銭を稼ぐ芸人。現在ではほぼ絶滅。

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