パパラギ

「ありがとうございます!これでうどんを凍らせずにすみます」

 座布団が減って、風小僧は喜んだ。

【座布団三枚確認!総座布団数15】

「凍らないようにはなったけど、これじゃまだ冷たいなあ」

「冷やしうどん専門店にした方がいいかもしれないわね」

 体は温まらなかったが、とにかく寝るしかない二人は、宿に戻って一夜を明かした。

 翌朝から旅を再開。ここはなかなか大きな町のため、あちこち見て回りたくなる。旅の疲れが抜けるまでもう一泊していってもいいと考え、息抜きをすることに。

 すると何やら往来の真ん中で騒いでいる男がいた。浅黒い肌に腰蓑一丁。髪はボサボサで、骨で出来たアクセサリーを首から下げていた。どこかの原住民の酋長といった風態である。

「パパラギ!パパラギ!」

 二人を見ると、酋長風の男は大声で叫んだ。

「そこのパパラギ!私の話を聞いてくれパパラギ!」

「パパラギ?だったら人違いだぜ」

「いや、この人の国の言葉っぽいわね。きっと私達のことをひっくるめて、パパラギって言うんじゃないかしら?」

 大きく頷いた酋長。

「パパラギ、私の国、みんなおかしくなった!この国からやって来た、派手な女のせい!」

 派手な女という単語に反応する二人。魔女コーラルの姿が頭をよぎった。

「おい、まさかそいつは、髪の長い、若作りしている女かい?」

「パパラギ!私の国の人々、平和に暮らしていた!海で魚を獲り、山で獣を獲り、バナナの皮を見つけては滑って転び、ヤシの実でヘディングしながら、平和に、平和に暮らしていた!」

「あんまり平和そうじゃないなあ」

「ところが、派手な女、やってきて、いけない遊び教えた!」

「いけない遊びだと!?」

 与太郎は変なことを考えた。

「いけない遊び!よくない遊び!やめられない遊び!止められない遊び!終わらない遊び、教えた!みんな夢中になった!私も夢中になった!私、いけない遊び、したくてたまらない!今からいけない遊び、ここでやる!」

「おい、場所と時間を考えろ!?」

「派手な女、いけないこと教えた!魚より、獣より、座布団大事!私の国の人々、座布団の取り扱い、夢中!オマエ、マヌケ面したパパラギ!私といけない遊び、ここでする!」

「お前とここで!?勘弁してくれ!」

 与太郎はまだ分からないらしいが、キセガワは話を理解した。

「要するに、この人は妖喜利バトルがしたいのよ。お望みどうり、勝負を受けて立ったら?」


【妖喜利バトル】

 キセガワよ。分かるわ〜、妖喜利って、クセになるのよね〜。でも、やり過ぎは禁物。妖喜利と厚化粧はほどほどにってね。それじゃ問題、行ってみよ〜。良かったらみんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 皆さん、何かをやめられない人になってみてください。私が「そいつはいけねえ」と言いますから、さらに一言続けてください。

(与太郎の回答)

「焼肉屋を見ると、必ず入ってしまうんです」

「そいつはいけねえ」

「ビーフジャンキーなんです」

 …また駄洒落で来た?駄洒落とお洒落はほどほどに。


※パパラギ…三遊亭圓丈師匠の創作落語。

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