ちりとてちん
「どうだ、見たか〜!」
いつになく力が入るキセガワ。
「オホホ、なかなかやりおるのですわ」
【座布団一枚獲得!総座布団数9】
コーラルはどこかに去って行かなかった。いつまでも与太郎を椅子代わりにしたままである。
「まさか川に突き落とすつもり?そんな御無体な、オホホホ」
結局、向こう岸までそのままであった。
到着して、ようやくコーラルから解放された与太郎。ほっと大きく息を吐いた。
「ふう、化粧の匂いが移っちまったい」
気付けばコーラルはどこかに消えていた。
「この町はなかなか賑わっているわね。面白いことありそう」
とりあえず急いで宿を探そうと思ったが、その必要もないようだった。川岸にある大きな宿が、派手な呼び込みをやっていたのだ。
派手な格好をした若い娘の一団が、店の前で陽気な歌を歌っている。
チリトテ、チントテ、チリトテ、チン。川沿旅館でチリトテ、チン。
「お兄さん、いらっしゃ〜い」
「姉さん達、チンドン屋かい」
「わちきら、チリトテ・ガールズでございます。あ、それ、チリトテ、チンったら、チリトテ、チン」
若い娘に手を引かれて、与太郎の鼻の下は伸びっぱなしだ。
「もう〜、しょうがないわね」
仕方なく、キセガワも宿に入っていった。
夕食は広い食事会場で、宿泊客一同が会して食べる形だった。
そこでも、チリトテ・ガールズなるもののショーが行われた。
「イシシ、いいねえ〜。若い娘が歌って踊る、それを肴に酒を飲む。いやあ、眼福、眼福」
「呆れた。どうしてこう男ってのは若いのがいいのかしら。うん?」
出された食事に、おや、と思うキセガワであった。
「ねえ、お女中さん。このお豆腐みたいなのって何かしら?」
「そちらは、ちりとてちんでございます」
それをそっと除けるキセガワ。一方、与太郎は。
「おや、何だろう、これは。赤、青、緑、黄色、オレンジ、紫。いろんな色だね。この辺の名物かな。きっと酒のアテだろう」
ヒョイとそれを口に放り込んだ。
「うん!?オヒョ!?ほれヒャ、ふひゃ、むヒャ!??」
そのとき、リンリンリーン!と、ベルが鳴った。
「妖喜利タイーム!妖喜利タイーム!どなたか、チリトテ・ガールズと妖喜利バトルする方はいらっしゃいませんか〜?勝てば座布団三枚プレゼント〜」
「あら、願ってもないチャンスだわ。はいは〜い、この与太郎が挑戦するわよ〜」
「うひゃ、しゃしゃ、ぬヒャ〜!?(俺は一体、何を食べたんだ!?)」
【妖喜利バトル】
ハロー、キセガワよ。各地に名物はあるけど、ちりとてちんはね。与太郎は食べちゃったけど。それじゃ、妖喜利バトル行ってみよ〜。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
皆さん、どこかの名物を売りに来てください。食べ物でなくても結構です。私が「それください」と言いますから、さらに一言続けてください。
(与太郎の回答)
「フィリピン名物、ピナツボ火山だよ」
「それください」
「今なら、ピーナッツぼ付いてます」
…駄洒落で来たわね。これで三枚獲得できれば儲けものだけど、はたして。
※ちりとてちん…上方落語の演目。東京では酢豆腐。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます