そば清

「くっ、強い!」

「あらあらん、その程度じゃ私には勝てないドロン」

【座布団三枚没収!総座布団数1】


「それではこの辺でドロンします」

 親父ギャグを放って、コユーレイは去って行った…。



「悔し〜い!でも流石は妖喜利六将軍ね」

 その後、急いでオーツキ村に入った二人。粗末な旅籠屋に泊まって旅の労をねぎらった。


 翌日、村の中を散策することに。姿をくらましたコユーレイの行方も知りたいところだ。


 いろいろと情報を仕入れて回って、昼時に一軒の蕎麦屋に入った。


「お、なかなかいい蕎麦出すじゃねえか、この店は。こちとら江戸っ子でい、根っからの蕎麦っ食いだからな」


 蕎麦など賞味期限切れのインスタントのものしか食べたことはないが、つい見栄を張る悲しい与太郎である。一方、キセガワが頼んだのは名物の団子汁だ。味噌仕立ての汁に小麦粉を練って作ったお団子が浮かんでいる。


「根菜がたっぷりで体が温まるわあ」


 蕎麦をズルズル啜りながら、横目で団子汁が気になる与太郎であった。

(俺もあっちの方が良かったかなあ)


 すると店に客の男が入ってきた。給仕が注文を聞き、青ざめる。


 しばらくすると、店の天井まで届こうかとばかりに、ざる蕎麦が積み上げられた。

 それを何食わぬ顔で平らげていく。


「おいおい、あの野郎。あれだけの蕎麦を食おうってのか。よう、こっちにもざる蕎麦追加だ!」


 よせばいいのに、向こうを張ろうとする与太郎。だが二枚食べたところでギブアップした。


「バカね。でもギブアップするの早すぎじゃない?」

「生まれて初めて本物の蕎麦を食べたんでい、文句あるか!」

 自慢にゃならない。


「それより相手を良く見なさい」

 与太郎が見ると、象のような巨体の妖怪がそこにいた。


「うわっ、俺はあんな奴と勝負しようとしてたのか」

 そもそも、誰も勝負してくれと頼んではいないのだが。


 すると、相手の方から与太郎に話しかけてきた。

「パオーン。そこの方、一つ私と勝負しようじゃ、あ〜りま温泉」


「滅相もない。旦那とあっしじゃ勝負は見えておりますで、えへへ」

 強い相手には卑屈になる与太郎。流石は与太郎なだけある。


「いえいえ、私が勝負と言いますのは、蕎麦食いのことではありま温泉。あなたもラクゴ国の住人だ。妖喜利の勝負と行こうじゃありま温泉。あなたが勝てば、私がそちらのお代を持ちましょう。その代わり私が勝てば、このざる蕎麦200枚の代金を払ってもらいますパオン」


「なるほど、そいつは名案ですな」

 脊髄反射的に安請け合いをする与太郎。妖喜利バトルが始まった。



【妖喜利バトル】

 ハイハ〜イ、キセガワよ。出し抜けにバトルが始まっちゃったわね。勝てば蕎麦代を払わなくてラッキー、って、負けたらいくらになるのかしら?リスクとリターンが全然吊り合わないわよっ!みんなはこんな与太郎みたいなことしないわよね。それでは問題、行ってみよ〜。良かったらコメント欄を使って楽しんでみてね。


(お題)

 皆さん何かのギャンブルで勝った人になって「やったー」と大喜びしてください。私が「良かったね」と言いますから、さらに一言続けてください。


(与太郎の回答)

「やったー」

「良かったね」

「10年前に賭けたナマケモノ競争、ようやく結果が出たってのに、その間に酷いインフレで価値がなくなってやがる…」


 …買った方が悪いわ。


※そば清…蕎麦食いの賭けをする噺。

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