幽霊の辻
「うむ、拙者の負けでごんす」
ズシーン、ズシーンと巨人はどこかに去っていった。
【座布団一枚獲得!総座布団数4】
「ひい〜、けったいな奴がいるもんだな〜」
途中で気づいたのか、妖精キセガワが決まり悪そうにパタパタやっていた。
その後、適当な宿を見つけた二人は、翌日に備えて早めに就寝した。明朝早く、次の目的地に向かって町を出た。
「さあ、オーツキ村という所まで行くわ。日が暮れるまでには着けると思うわ」
だが、道は山道。不慣れな与太郎の足ではなかなか思うように進まない。すぐにバテて休憩を挟む。
「も〜、しっかりしなさい」
「俺は都会育ちなんだよぉ」
全然都会人に見えないくせに、変なところに江戸っ子のプライドがある与太郎である。まだ山を下りぬまま、早夕方に差し掛かった。
「うう〜、ここで野宿は避けたいわ。あ、あそこの茶店で聞いてみましょう」
峠の茶屋で道を尋ねるとお婆さんが出てきた。
「オーツキ村ならこの道を真っ直ぐですだ」
「良かった〜」
「幽霊の辻という所を越えたらすぐそこですだよ」
不吉な名前にドキンとする与太郎。
「え、ゆ、幽霊の辻!?幽霊でも出るのか?」
ところがお婆さんはさっさと奥に入り、店じまいしてしまった。
「ほら、とっとと歩く!暗くなったら本当に幽霊が出るわよ」
「ひぃ〜、待ってくれよぉ〜」
先に行くキセガワの後を追う。幽霊は怖いが、こんなところに取り残されるのは勘弁願いたい。
だが山を下りる頃には日もとっぷりと暮れ、そのうちに不気味な感じのする四ツ辻に出た。
「ここか?さっきばーさんが言ってた、幽霊の辻ってのは」
「う〜ん、雰囲気がいかにもって感じよね」
キセガワも流石に怖さを感じているようだった。
そのときである。一陣のつむじ風が舞って、妖しい人影が二人の前に立ちはだかった!
「ウラメシヤ〜、ドロドロロン」
「ギャー!で、出た、出たあっ!」
「落ち着いて!こいつ幽霊ではないわ。相手の姿をよく見て!」
勇気を振り絞り、言われた通りにする与太郎。
「な、な〜んだ、脅かすない。白装束に、三角頭巾。ちゃんと足もなくて、って、幽霊そのものじゃねえか!!」
顔はフランス人の二枚目俳優に似てなくもないが。
「いいえ、こいつは、Dの手下よ!」
「何だって!?」
「こいつは、妖喜利六将軍の一人、コユーレイ!」
「妖喜利六将軍?そういやそんなの聞いたな」
「妖喜利六将軍とは、Dの手下の6人の妖喜利マスターのことよ」
「あらあらん、花魁のお嬢さん。この私をご存知のようだね、ドロドロロン」
コユーレイが喋った。
「大人しく座布団を置いていくドロン。さもなくば容赦はしないドロン」
「くっ、こんな強敵が現れるなんて!」
妖喜利バトルが始まった。
【妖喜利バトル】
キセガワよ。いきなり強敵が現れたわね。準備はいい?生半可な答えでは座布団を取られるわよ。読者のみんなも良かったらコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
皆さん幽霊になって「ウラメシヤ〜」と誰かの元に出てください。私が「出たー!」と言いますから、さらに一言続けてもらえるかしら?
(与太郎の回答)
「ウラメシヤ〜」
「出たー!」
「家をリフォームしてくれるってここですか?二階建てにしたいんです。階段(怪談)のある家に住みたいもので」
…勝てるかしらね。
※幽霊の辻…桂枝雀師匠の演目。ユウレンと読む。
※オーツキ村…小遊三師匠の故郷は山梨県大月市。
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