第5話 逢えない日々...
新年が明けてから彼と会うことはしばらく無かった。
さみしいと言っちゃいけないと思ったから言わなかった。本当は会いたかった。
クリスマスにあげようと思っていた時計はまだ家にあった。
彼の誕生日も過ぎた...
きっと終わったなぁと思った。
2ヶ月くらいだもんな〜。
この時計だけ渡せればいいや。家にあっても仕方ないし。
"もうすぐ会わなくて1ヶ月経つね...さみしい。"
"そろそろ会うか!"
あっさり連絡が来た。
天の気持ちはさっぱりわからないが、彼は私を純粋だと思ってなかったから、会いたいって言ってこなきゃ別にいいやと思ってたのかもしれない。
当日の朝、ミートソースを作ってたので食べたがってなぁーてのを思い出して、保温マグにマカロニを入れて熱々のミートソースを流し込んだ。
時計は普通にあげるのは恥ずかしかった。
自分だけ彼を好きだと思ったからだ。
重苦しくなっちゃう...
だから、ラッピングは全部剥がした。
驚かせてあげようって思った!
いつもと変わらず天は迎えに来た。
いつも愛車は黒のハイエース77番。
何故か目立つ車。
ハイエースで迎えに来る彼が好きだった。
お金が無いわけじゃない。物欲がないのだ。
全然高いものも買わない。気取らない。なのになんか派手。
ご飯もラーメンとびっくりドンキーが大好き。
子供みたいだった。
いつも通り露天風呂のお部屋に入った。
そこで作ってきたミートソースをあげた。
"え?作ってきてくれたの?"
"うん!天食べたいって言ってて今日ミートソースにひたからさ"
"やべぇーーー!!!!まじうれしい!!海のミートソース食べたかったんだよねぇ!"
私はいつもご飯を作ると天に写真を送ってた。
それをおいしそうって言ってくれる天がかわいくて、私の喜びだったから。
天は喜んで食べてくれた!
味見したらマカロニがネチョネチョで美味しくなかった...
"まずっ"
"そんなことない!めっちゃおいしいよ!不味いなんて言うな"
何してもオーバーリアクションで優しかった。
いつもありがとうって言ってくれた。
お昼くらいにテラスに出た時に、
"てーん、目つぶって〜(*´︶`*)ノ"
"え?なんで??"
"いいから!絶対開けないでよ!!"
"わかった!"
さっと時計を天の細い腕に付けた。
"いいよぉ〜!!"
そっと目を開ける天
"ぇ!!ええーーー!!!!まじかわいいい!!!!感動したぁ!!やべぇーーー!!!!泣きそう"
ほんとにオーバーリアクションだなぁ...
G-SHOCKで安物なのに。
現場用に使ってね!ピンクのG-SHOCK使ってるって言ってたでしょ?
私があげたのは天に似合いそうなスカイブルーのスケルトンのG-SHOCK。
一目見てコレだって思った!!
彼はその日からしばらく、お風呂以外で時計を外さなかったらしい。
家の中でG-SHOCKしてる人いる?
おかしいね。全てが愛おしかった。
私服もG-SHOCKでくるから、
"もうさ40手前なんだからいい時計買ったらいいじゃん?"
"ばかやろう!これがいいんだ。これが気に入ってるんだ。ずっと大切に使うんだ!"
"まぁ、そんな喜んでくれるならいいけどね..."
私は1ヶ月会えない期間に少し冷めてしまっていた。
冷めたというよりいじけた。
春が待ち遠しいまだ長い冬だった。
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