街ブラで笑いとりたい、初瀬ちゃん4
百均から映画館へ。
ブー、と音が鳴って、開幕。
そして2時間後、エンドロールが終わる。
「うぅ……。さっきの映画良かったですね、ゾンビと物干し竿の純愛で涙が止まりません」
「そうだね。感動したよ」
「ないです! そんなシーン! 次いきましょう!」
***
併設されたボーリング場、かこん、と音が鳴る。
「やったぁ、ストライクです! ボディタッチしましょう!」
ハイタッチ、ぱちん。
「突っ込んでください! ハイタッチです!」
***
ぴろりろ、とポテトのあがる音が鳴る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ハンバーガーのバンズトッピングで!」
「セサミになさいますか?」
「え、あ、そういうことじゃ、はいそれでお願いします」
***
カーカー、とカラスが鳴いて、今は帰り道。歩道を歩いていると、車が一台通り過ぎた。
「うう……結局、今日1日笑わせることができませんでした」
「気にしなくて良いのに。それより、初瀬さん、楽しかった?」
「え? あ、はい。すごく、すごく……はい! すごく楽しかったです!!」
「それなら良かった」
「あなたも楽しかったですか?」
「うん」
「えへへ。それは嬉しいです」
初瀬さんはこそばゆそうに、そう言った。
「あ、あの。今日、すごく楽しかったです」
「聞いたけど?」
「何度も言いたいんです。本当に楽しかった。だから……」
初瀬さんは真面目な顔で続ける。
「また一緒に遊んでくださいませんか?」
「惜しい」
「え? 惜しいって何ですか?」
「この真面目な回答が来るタイミングでボケられたら笑ってたかも」
「な!? ここでボケれば良かったんですか!?」
頷くと、項垂れた。
「まだまだ、先は遠そうです。あの、私に自信がつくまで、付き合ってもらっても良いですか?」
「うん」
「そうですか! これからもバンバンいきますから、覚悟しててくださいね!」
頷きながら、思う。
遠い、なんて言ってたけど、この調子なら、きっとすぐに友達ができる。
彼女の寂しさを埋める手伝いはすぐに終わる。
笑うのを我慢する必要もすぐになくなるのだ。
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