大喜利がんばる初瀬ちゃん 1


「ダメでした……」


 部屋に入ってきて開口一番のセリフはそれだった。


「昨日、自信をいただいて、話しかけようと思ったんですけど……ダメでした」


「普通に考えて、いきなり話しかけてエピーソードトークするのは、やばいです。それもその後がないので、したら、こいつヤバいと思われて、一生友達になれないところでした。ギリギリ踏み止まれて良かったです……」


 ギリギリだったんだ。


「それはそうと、今日の夕食です。おおさめください」


 鍋からご飯の乗ったお皿にカレーをよそってくれる。


「スープカレーです。素揚げした野菜と、煮込んだお肉が美味しいやつです。どうぞ」


 美味しそうなのでお礼して食べる。見た目以上に美味しい。


「美味しいよ」


「お口にあって良かったです! スープカレー実は得意料理なんですよ!」


 初瀬さんは嬉しそうに笑ったあと、それでですね、と切り出した。


「今日は大喜利をしたいと思います」


「やめときな」


「何で止めるんですか!?」


「だって難しいよ」


「わかってます、難しいのは百も承知です」


 ですが!! と初瀬さんは続ける。


「私が面白いことを言うには、会話の流れで不意に言うしかありません」


「ですのでそれに必要とされる、会話の流れからボケる閃き、その瞬発力、さらに面白いことを考える想像力。それらを大喜利で養いたいと思ったんです」


 う〜ん、一理ないこともないけど、一理しかないことはある。


「聞いてくださいませんか、私の大喜利?」


「まあ、いいけど」


「ありがとうございます、じゃあこのアプリで、適当に出てきたお題について、私が答えていきますね」


「早速行きます! 最近できた、スーパーマーケットが大人気、何故?」


 はい! と初瀬さんは手をあげた。


 自分で読み上げて、手を上げて答えるの可愛い。


「従業員全員が小学生だから!」


 可愛い。


「……あ、あの、これはですね。小学生が働いているという物珍しさと、その可愛らしさが人を集めるんじゃないかな〜っと考察した次第で……うぅ、次! 次行きます!」


「最近できた、スーパーマーケットが大人気、何故?」


 はい! と初瀬さんは手をあげた。


「常連さんのポニーテールを追っかけてくる人が一杯いるから!」


 可愛い。


「……お、追っかけたくなりません? ひょこひょこしてたら?」


「初瀬さんは、なるんだ」


「な、なっちゃダメなんですか! い、いいじゃないですか! なっても別にいいでしょう!」


「いいんだろうか?」


「も、もういいです! ま、まだ行きますよ! 最近できた、スーパーマーケットが大人気、何故? はい!」


 どうぞ、と掌を上に向ける。


「アスパラガスの門松売りがある!」


 それはもはやわからん。


「……う、嬉しいじゃないですか、アスパラガスが門松みたいになってたら! それに面白いでしょ! アスパラガスが門松みたいにして売られてたら!」


 う〜ん、どうなんだろう。解説を聞いてなおわからん。


「次! 次いきましょう! このお題は向いてなかったです! 次のお題にいきましょう!」


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