きたれり

〇コッコとマータの再会。そしてトニーの覚醒。あるいは末路。


・完璧だった防御を抜かれ、うつぶせに倒れるトニー。

・「くそ……動かん……」

・左肩を突かれた形で、しかも槍がコンクリートまで穿っている。電磁加速を利用して一気に突き落としたのだ。

・「ボクの、勝ちだ」

・「ああ、クソ。マジかよ。負けるなんてな……」

・悔しげなトニー

・「ああ、無念だ。何とも味気ない。せっかく。せっかく正義に味方って奴に出会えたのに」

・「……それは違うよ。ボクはそういうのじゃない。ただあの子と、もう一度話したかっただけだよ」

・「かっか。違わねえよ。ただ会いたい。話したい。なんともロマンティックな話じゃあねえか。ああ、口惜しい。もう少しで食えたのに」

・「……そうして、人から奪うだけだったの。自分で、正義を成そうとは思わなかったの?」

・「ああ……?」

・「残念だよ」

・「ここねー!」

・待ちきれずに飛び込んできたマータを、コッコは抱きとめる

・「……よかった」

・そしてその場で、涙を流す

・「ボクでも……うまくできた……」

・「ココねー……」

・へたりこんで、二人で抱き合う。

・「ごめんマータちゃん。護り切れなくて」

・「もういいよ。大丈夫だよ」

・「本当に。本当に……」

・「コッコ! 違う! まだ終わっていない!」

・イナバの叫び。

・見るとトニーが、自身の尾びれを食らっていた

・「自分で……? そうだ。そうだ。わざわざ他を食わなくても、俺様には俺様があるじゃないか。ああ、そうだ。この味だ。ずっとこの味が欲しかった」

・自分で自分を食べる。しかし、オチミズによる再生能力が暴走している。食べる量より、増える量の方が多い。

・皮膚を突き破り、肉が泡立つ。

・泡立つ肉から、手が、目が、足が湧いてくる。他の肉にまた飲み込まれ、膨らんでいく

・「イモータル化だ!」

・イナバが叫ぶと同時に、コッコとマータは倉庫の出口に向かって走る。

・トニーの肥大は、倉庫の天井に届いても尚止まらない。

・そして泡立つ肉の中に、少女の姿があった。

・空色の目と髪をもつ、透き通る肌の少女。

・なぜそれがトニーの膨らむ肉から生まれているのか、まるで理解できないが、マータはその少女が何かを口走ったのがハッキリ見て取れた

・「きたれり」

・瞬間。爆発的に肉が増殖し、倉庫は崩壊した。

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