目覚めよ、太陽

〇決戦の場に向かうコッコ。


・トニーとマータが去った後。

・「じゃあ。この街から出るぞ」

・イナバの提案。コッコは目を丸くする。

・「もうこの件は一介のトラブルシューターがやることでも一介の巡礼騎士ができることでもない。お前はもう手を引け」

・「それじゃあマータちゃんが……!」

・「水上警察に任せろ。それともお前、本気で決闘して勝てるとでも思ってたのか」

・「ボクは……!」

・「一アーキテクトとしての意見を言わせてもらうなら、お前が奴と戦って勝つ可能性はゼロだ」

・「そんなのやってみなければ……!」

・「アイツのアーキタイプもお前のアーキタイプも、俺が設計したんだ。わかるさ」

・イナバが明かす経緯

・トニーの使うアーキタイプは特注の超重量級タイプ。本来なら重量過多で動けなくなるような重武装を、本人の霊力で無理矢理動かしている。スピードもパワーも桁違い。

・対して、コッコの使うOZシリーズは試作タイプに過ぎない。完成度は低く、フィッティングも完ぺきではない。そもそも、現在のコッコの体調を考えれば、霊力自体に差があるこは間違いない。

・制作者が同じなら、変数は使い手の霊力。その点、コッコは明らかに力負けしている

・「お前が決闘して死んだら。確実にマータは死ぬぞ。俺はマータを見捨てろと言ってるわけじゃない。お前では助けられないから他を当たれと言っているんだ」

・「…………」

・「わかったなら、早く行くぞ。警察への通報は俺がやるから。通信ができるエリアまで上がろう」

・コッコは無言のまま、一個のパックを取り出す。

・保存性の良いチーズと使った。チーズタラ。

・「これは、死ぬ前に食べるチーズ」

・「……を、食べる前に食べるチーズを食べる前に食べるチーズ」

・「確かに今ボクは腹ペコだった。迂闊だったよ。腹ごしらえを先にしておくべきだったね」

・「おい。そういう意味じゃなくてだな……」

・「先生が言っていた。騎士たるもの、デートの約束は破ってはいけない。二人に会いに行かなきゃ。ボクは騎士だから」

・「言ったはずだ! 可能性はゼロだと!」

・「なんのための試作だったの?」

・逆に、コッコが問う

・「OZシリーズは三タイプあった。三つそれぞれ構成が全く違う。何のために違うタイプを複数用意したの? 三つ目のタイプは何のために?」

・「三つめは……決闘用だ。【最強の騎士】を倒すために作った……」

・「先生だね? ナッシング=レイヴンを倒すための」

・「…………」

・「ねえ。ボクもそう思うんだよ。トニーに勝てる可能性のあるのは三つ目のタイプしかないって。でもそれが試作だというのも分かってる。だから……今、ここで完成させよう。それしかないよ」

・「……絶望的な可能性ってのは覆せないぞ。時間だってもう無い。夜明けまでもうわずかだ」

・「水上警察に任せるよりは、確実でしょ?」

・「完成すれば。理論上はな」

・「ボクは。騎士になるために力を得た」

・「ああ」

・「ボクは。いつか死ぬ」

・「ああ」

・「だからボクは、みんなを救いたい。力を貸してほしい」

・「……仕方ないな」

・コッコからディスクを受け取り、イナバは改良を始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る