天気輪の柱
〇コッコと温めるマータ。しかし再びトニーに追いつかれる。『正義』を問うトニー。
・地下鉄駅に現れたトニー。シートにくるまったままのコッコとマータ。そしてイナバ。
・「あー。トニー。もうちょっと待っててくれないか? 見た通りほら、複雑な状況でさ……」
・「聞いてねえ。関係ねえ。むしろ二つがまとまっていて処理しやすくて助かる」
・「ああ、だからトニー。こっち向けって」
・ぽとり。
・イナバが腹の中から出したプラスチック爆弾。ネジクギ二十本入り。トニーの足元に転がる
・「……言ったろ」
・トニーはそれをひょいと拾い上げて、大きく口を開けて放り込んでしまった
・爆発
・しかしトニーにダメージは見受けられない。
・「プラスチック爆弾はスイートだ。ネジクギ二十本もキクな。いいおやつになったぜ」
・「はは。時間稼ぎにもならないか……」
・「いや、いい」
・声。ぐるっと、マータが転がる。ひっくり返されて、コッコが上に。
・そしてコッコは立ち上がり、トニーと対峙する
・「マータちゃんに手出しはさせない。ボクが相手をする」
・「ふん……キンタマをそんな縮こませておいて、何を言ってやがる」
・「アナトリアの古代の美術ではあんまり大きいのは美しくないとされていて……」
・「いやなんでそこで言い訳がましくなるんだよ。何か噛み合わねえなお前とは」
・呆れるトニー。
・「だがまあ良い。自ら身を差し出してくれるなら食べやすくて良い……」
・「ダメ!」
・だがそこに、マータが割って入った。
・びたんびたんと尾びれを跳ねさせて、必死に割り込む。
・「ココねーを食べないで! 食べるならマータだけでいいでしょ!」
・「……」
・びたんびたんびたん
・「おい。かっこつけてる所悪いが、少し落ち着けよ。人間の足にしたらどうだ?」
・「や、やってる! やってるけどもうちょっと待って!」
・「というか身体隠そうよマータちゃん。ほらシートかけて……」
・「ココねーだってまだ身体冷えてるでしょ! やめてよ!」
・ぐだぐだ、口々に言い合う三者
・「いや、ひでえなこれ! ちょっと順番に話せ貴様ら!」
・イナバがツッコミを入れて、状況を整理する。
・コッコの意見→マータを食べるなら先に自分と戦って食え
・マータの意見→自分が食われるからコッコに攻撃するな
・トニーの意見→どんな要求があろうと従うメリットはないので両方食べます
・「……どうすんだよ」
・「だから!」「いや、それはいいから。じゃあ俺から提案だ」
・「コッコが、マータをかけてトニーに決闘を申し込む。それでいける」
・「はあ? 決闘?」
・トニーがボヤく。
・しかし、冷静に考え直して、何かを納得する
・「……おい人魚。お前、自分が死んでも騎士サマを護る気なのか」
・「そういってるじゃん」
・「騎士サマも、人魚のためなら死んでいいと思ってる」
・「だからそうだって」
・「つまりお前らは、愛と正義のためにお互いを犠牲にしようとしている……そうなんだな?」
・「……?」
・愛と正義。トニーらしくない物言い。
・「俺様はいままでいろんな人間を食ってきたがな。そういう愛とか正義は食ったことがない。どいつもこいつも、最後には自分の身かわいさに恋人も家族も犠牲にした。そういうモノだった……」
・けれど、コッコとマータは違う。その、可能性がある。
・「だから、お前たちの愛と正義をためさせてくれ。人魚を連れていく。騎士サマは指定された場所に時間までに来い」
・「それまでにマータちゃんの無事を保証するの?」
・「保証ではないな。単に俺様のシュミだ。本当の騎士なら、自分の身を顧みず助けに来るんだろう? そして愛と正義があるのなら、人魚もお前を待つのだろう? 食べる前にそれが台無しになっては、俺様が困る」
・「……マータちゃん」
・「構わないよ。この人も嘘はついてないと思う。本当に、正義に憧れてる」
・「良いだろう。彼女の身柄を貴公に一度預ける」
・『騎士』の口調になるコッコ
・「わかってくれて助かる。では人魚。服をさっさと着な。裸のガキを連れまわすようなシュミは俺にはねえからな」
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