はおちーらいらい

〇レストランに招待されるコッコとマータ。マリカの登場。


・展望台のレストラン。

・都市を一望できる上、フロア全体が一時間かけてゆっくり回転している。

・コッコとマータ。そしてイナバを、料理が待ち受けていた。

・それは炒飯と呼ばれたり麻婆とも呼ばれたし、野菜炒めとも言われた。しかしいずれも合成ではなく、あるいは『天然の本物』でさえあるかもしれない一流の食材を、やはり特級の技術で調理した絶品ばかりだ。コッコの知るものとは全く別物。

・当然マータにとっても、こんなものは名前も聞いたことがない。

・見た目も匂いも最高なら、さぞ味も素晴らしいモノに違いない。

・いただきますを言ってから、マータは箸をつけようとする

・しかし、止まった。

・「マータちゃん。違和感があるなら、食べない方がいい」

・コッコは、あろうことかこの料理を前にして、腕を組んだまま箸に手をつけない。

・「あら。お気に召していただけませんでしたか? 騎士様」

・コッコに声をかける。この場のホスト。円卓の向こうに座った女性。

・マリカ・ウィクトーリア。ホテルの支配人。

・彼女自ら、コッコ達をレストランに招いていた。

・「ごめんねマリカさん。その……この料理。鶏肉を使っているかな? 太陽教の教義だと、騎士は鳥の肉を食べてはいけないことになってるんだ」

・「あらいけない。そうでしたのね。しかし、その皿とそのお皿の料理なら肉はありませんよ」

・「うん。でもスープやソースに鳥がらをつかってないかな? シェフに確認して貰って良い?」

・「……承知しました」

・マリカが厨房からシェフを呼ぶ。

・現れたシェフ。顔に札を貼り付け、両足を揃えて『跳ねて』こちらにやってきた。

・キョンシー。死に生きるモノ。道士によって使役されている者

・シェフはマリカに何事か耳打ちした後に、去っていく

・「……残念ですわ。その皿にも鳥のスープを使っているようです。申し訳ございません」

・「いいえ。こちらこそごめんなさい。先に言っておくべきだった」

・でも。コッコは続ける

・「すごいね。この料理も、キョンシーさんが作ってるんだ」

・「ええ。その通りです。当ホテルの労働者は、大半がキョンシーです。食事も休息も賃金も必要ない、理想的な労働者ですわ」

・料理を運んできたウェイターも。入り口を守っているガードマンも。このホテルの従業員は皆キョンシーだ

・「もちろん。同意の上でキョンシー化しておりますわ。彼ら彼女らは皆、死後も当ホテルで働きたいと自ら望んだ者達です」

・「同意……」

・マータも噂には聞いていた。リヴァイアサンは金融業も行っており、そこでの借金がかさんだものが行く場所。

・死んだ後も働かされる

・それが比喩でもなんでもなかったことに、戦慄する。

・「頼もしいね。ある程度簡単な技能なら身体に直接組み込んだりもできるんだ」

・「身体が多少固くなっているので、上手く使えないスキルもありますがね。そこはこれからの技術の改良が必要でしょう」

・「戦闘用に使うとしても、そこいらのチンピラよりは強そうだ」

・入り口を固めるキョンシーを見て、コッコは呟く

・「ええ。ここのセキュリティーは完璧。周辺のビルも固めておりますので、狙撃の心配もありません。ご安心を」

・「じゃあ……お仕事のお話をしようか……」

・「マリカさん。ストームルーラーがどこにあるか、知ってるね? 教えてくれない?」

・「もちろん。お教えいたしましょう。ストームルーラーは」

・マリカが、手にした鐘でマータを示す

・「マータ・カルカーサ。あなたです。あなたこそが、嵐の王です」

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