港湾労働者組合。壊滅。

〇倒れてるシャコ兄弟。そこに現れるトニー。


・九朧城。底部。

・海に沈みかけた廃墟に、夕日が差している。

・「大丈夫か? ポート」

・「なんとか平気だ。兄貴」

・赤く反射する世界で、ポートとスターボードの二人は、やっとの思いで海から泳いで、ここまでたどり着いた。

・「あの女騎士め……まさか本当に海に落とすなんて」

・隠し持っていたオチミズを呑む二人。スキットルに入れているので、多少の衝撃にも耐えられるようになっている。

・そしてオチミズを飲むと、傷も疲労もすぐに回復していく。

・再生力。それこそ、かつて月からもたらされたという力。

・もっとも月が何なのか、二人は知らなかったが。

・「ハーンの奴も捜しにいかなきゃな。きっとどこかでノビてるはずだ……」

・「このまま報告もできないしな。とりあえずあの女騎士を追撃して報告はその後に……」

・「いいや。その必要はない。ここで聞かせてもらう」

・暗闇から現れる、頬の白い男。

・「きょ、局長!?」

・港湾労働者組合局長。トニー・ジャオ

・「イナバのねぐらを念のため張らせていたが……その様子だと何かあったんだな?」

・「い、いや、ええと……」

・「なんて冗談だ。とっくに事態は把握している。アナトリアの女騎士が出てきて、お前らをぶちのめして行ったんだな? 可愛そうに」

・「も、申し訳ございません!」

・頭を下げる二人。

・「何。集金係の方でもアナトリアの騎士が出てきたって報告を聞いたしな。赤い髪を二つにくくったタレ目のガキだろ」

・「はい。その通りでした。タレ目でした」

・「話に聞いた限りだが……似てるな。アイツに。特に金色の目でタレ目ってのが」

・「? それは一体……?」

・「うん。こっちの話だ。どちらにしても、そんなに実力差があったんじゃあお前らじゃ捕縛は無理だったろう。仕方ないさ」

・「力が及ばず……」

・「だから、もういいぞ」

・ぐしゃ

・スターボードの半身が消える。

・「……はい?」

・下半身だけになって、海に沈んでいく弟を見るポート。

・「お前らは、もういい。後は俺様がやる」

・一瞬で噛みちぎり、スターボードを『咀嚼』しているトニー。

・「ちょ、ちょっと待って局ちょ……」

・「遠慮するなよ」

・抵抗も逃走もできない。ただ喰われるポート。

・作業服が鮮血で汚れるのも厭わず、トニーは二人を食べている。

・「……ふん」

・そして、エーテリウムでハサミを左右二つ構成する。

・「左でジャブ。右でストレート……ね。中々面白い」

・食べ残しは海に捨てて、沈んでいく夕日を見るトニー。

・「だが味は砂みてえだ。やはりダメだな。もっと良い肉じゃないとな……」

・「アナトリアの騎士は、そう言えばまだ食べたことはなかったな」

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