4:本編あらすじ
プロローグ
やれやれ。俺は爆死した
◇フォーメーションラップ。イナバとトニーの因縁と、ストームルーラー。
・『俺』はこの街の匂いが嫌いだった。
・人の心の澱みが、腐った感情が、あるいは本当に腐った肉とか臓物が、都市を迷走する運河を巡り、海の底にヘドロとなって堆積する。
・それが潮風に乗って、街に戻ってくる。この都市がどこにも開いていないことを思い出させるのだ
・特に雨の日は最悪だ。路面のゴミが、油が、あるいはもっと言語道断な何かしらが溢れだす
・そんな中を俺は、片腹を抱えながらに走っていた。傘も差さずに。靴もびしょ濡れで
・腹には血が滲んでいる。あいつら逃げる背中を容赦なく撃ちやがった。
・「イィナバァ……イナバイナバイナバ……イナバぁ!」
・雨の音にも負けない地獄のような声量と低音が、俺の名を読んでる。
・そう。俺はイナバ。とある大きな問題を抱えた男。
・追ってきているのは港湾労働者組合の局長。と言っても実際は、港湾地区と貧民街を支配しているチンピラどものボスだ。
・「今ならまだ許してやるぞイナバぁ……お前の事は友達だと思っていたからなあ……!」
・嘘だ。こいつが他人に気を許したことなんて見たことがない。友達なわけがない。
・まあ俺も友達はいないし、他人なんか信じていないが。
・運悪く生ごみを踏みつけ、ゴミ箱をひっくり返し、俺はゴミの中に転がってしまう
・なんてことだ。ゴミの中で死ぬのか俺は。
・「局長ぉ……そんな事より聞いてくださいよ……昨日吉野家行ったんですよ吉野家……」
・「お前が大盛りネギだくが好きって話は聞いたよ。それよか返せ。アレを」
・「へへ。嫌です」
・仕方がない
・俺は覚悟を決めて、ピンを抜いた。
・腹にダクトテープで巻きつけていた、手榴弾。二個セット。
・それを局長の至近距離で炸裂させたのだ。
・当然そこで俺は死ぬ。当たり前だが木っ端みじんだ。そして並みの人間だったら、局長も無事では済まなかったろう
・並みの人間ならば。
・「自爆だなんて、味なマネをしてくれたな」
・「しかし。異能者が。手榴弾二個でやれるわけねーだろ。ナメてんのか……」
・無傷。無傷だった。何故なら局長は、フォースフィールドを持つ異能者だったから。
・異能者に、通常兵器は通用しない。
・「結局何も聞けなかったか。一体どこに隠したんだこいつは」
・「ストームルーラーを」
・雨は一晩中止むことはなく、やはり俺は、この都市のヘドロとなって堆積する末路となった。因果応報。
・というわけで残念。俺の冒険はここで終わってしまった。
・あとは『後任者』が上手くやってくれることでしょう。
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