第4話 イケメンライバル登場!?
高校二年生。
来年には本格的に受験になるというこの中途半端な時期に転校生がやってくると聞いて、僕と姫子がいる教室は朝からざわついていた。
男だろうか、女だろうか。
いったいどんな理由でこの時期に転校生がやってくるのか。
正直言って、僕と姫子はお互いのこと以外はどうでもよかったから、転校生がどんな人間で、どんな理由があって転校してくるかどうかはどうでもよかった。
関心があるのはお互いのことだけ。
今年の夏は二人でどこかに行こうかなんて相談もしている途中で、僕らは自分たちのデートのことばかり考えていた。
「初めまして。
やってきた転校生の顔はこれでもかと言うほど整っていた。こんな田舎とも都会とも言えない中途半端な場所じゃなくて、都会に行けば、道端でスカウトされるくらいの顔だ。
僕はふと姫子を見た。
姫子の視線がその転校生に注がれている。
まずいぞ、と僕の脳みその中でサイレンが鳴った。
いくら前世のことがあると言っても、僕よりも顔が整っている男が現れたら、姫子はそっちに夢中になるかもしれない。僕だって、彼女には記憶が曖昧だと伝えているのだ。彼女がどこまで覚えているのか、僕は知らない。
こんな曖昧な記憶を忘れるような強烈なイケメンが目の前に現れたのだ。
僕は心配でならなかった。
だが、姫子に転校生に近づくなと言うのも束縛しているようで、嫌われないか心配だ。それなら、先に転校生の方と仲良くなって、僕が姫子と付き合っていると牽制するのがいいだろうと僕は思いついた。
「輝明くん、一緒に食べない?」
僕は昼休み、彼のことを誘った。
「誰も誘ってくれないかと思ったよ、ありがとう!」
ちゃんと美容院に行ってるんだろうなと思えるようなオシャレな黒の短髪を持つ彼は爽やかという言葉がよく似合うような笑顔と共に僕の前に座った。
「僕の名前は
「健太くん、よろしく!」
彼の話を聞いて、すぐに彼がどうして転校してきたのかが分かった。
彼の父親は転勤族で、昔から転勤を繰り返している。その結果、この中途半端な時期に転校することになったらしい。しかし、彼は転校そのものも慣れてしまっているようで軽い調子で「仲良くしてくれると助かるよ!」と言ってくれた。
「僕でよければ、なんでも聞いてくれ」
「それなら、ここらへんのことを教えてくれないか? 引っ越してきたばかりでなにも分からないんだ」
「お安い御用さ」
話をしてみると顔以外にも性格がすこぶるいい。こんな人間なら、誰だって恋をしてもおかしくない。例え、彼氏がいたとしても目移りする可能性がある。だから、警戒はしておかないといけない。
「さっそく、今日の帰りとかは……」
「悪いね。僕は彼女といつも帰ってるからまた今度にしても?」
「彼女と一緒に帰ってるのか!」
彼は妬むでもなく「いいなぁ」と僕に言った。そして、机に身を乗り出して口の横に片手を添えて「誰か聞いてもいい?」なんて聞いてくる。
「同じクラスの小口姫子だよ。彼女とは一年の頃から付き合ってるんだ」
「へぇ、そうなんだ」
僕が「彼女だよ」と教室の扉近くの席に座って、文庫本に目を落としている姫子を示すと彼は一瞬だけ、彼女のことを見つめた。
まるで、その瞳に彼女のことを焼き付けるようなその視線に恐怖を感じた僕は彼の意識を彼女から離すように「僕の彼女だからな」と釘を刺した。さすがに輝明もそこは弁えていたみたいで、彼は首を勢いよく横に振った。
「大丈夫だよ! 狙ったりしてないから!」
「本当だな? 信用しているからな」
僕はけらけらと笑いながら、冗談めかした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます