第3話 前世カップル誕生?
運命的な再会を果たした僕たちが付き合うのに時間はかからなかった。
むしろ、いきなり僕らが付き合い始めたと知ったクラスメイト達は、誰もが最初は冗談だと思っていたらしい。僕と彼女が一緒に帰ったり、休日に一緒にデートに行ったりすると彼らは驚いた。
「本当にお前、姫と付き合ってたのかよ」
その頃には、みんな姫子の前世ネタのことを一種のネタとして受け取り、姫子のことを姫と呼ぶようになっていた。僕は無難に彼女のことを「姫子」と呼んでいて、他の人達がどう彼女を呼んでいたかはそこまで気にしなかった。
僕が真剣に付き合ってると話すと誰もが驚いた。誰かが僕が王子だったのかと茶化すように言っていたら、姫子が後ろから僕に抱き着いてきて「そうよ、彼が私の王子なの」と言った時は柄にもなく、心臓が勢いよく鳴りだして、止まらなくなった。
彼女の長い髪が僕の顔の近くに垂れて、彼女が使っているらしいシャンプーの柔らかな匂いさえも分かってしまう状態に僕は顔が赤くなってしまった。
前世とか姫とか王子とか。
そんな話をしなければ、彼女は恋人としてとてもいい。見た目はよし、頭もよし。男子生徒の誰もが羨む僕の恋人は、だんだんと「前世とか話し出すヤバい女」から「彼氏持ちのリア充」へと変わっていった。
「他人の私への評価が変わった?」
彼女と僕は帰り道が一緒だった。
一緒の電車に乗り、乗り換えの時まで一緒にお喋りをする。そんな他愛もない毎日。僕は彼女を見る周りの目が変化したことに気づいた。要するに彼女のことを不思議な女ととらえずに、青春を謳歌している女子生徒という認識になっていると話したのだ。
僕の言葉に彼女はくすくすと笑った。長い睫毛がその黒い瞳を一瞬だけ覆い、恥じらいを見せるかのように僕に視線を向けた。
「私、他人がどう思っているかどうかなんて気にしていないの」
電車がやってくるまでの静かなホーム。
一歩近付けば、彼女のスカートの裾が僕に触れるその距離を、彼女は一歩だけ移動して、空いた距離を消した。彼女のスカートの裾が僕のズボンに触れる。
「私が気になるのは健太くんの気持ちだよ」
彼女はそう言って、照れくさそうに長い黒髪を一房手にとって、指先で弄び始めた。
「私、本当にあなたに会えてよかったと思ってるの」
「僕も……僕も君にまた会えてよかったと思ってるよ」
僕が本心を打ち明けることができるのは彼女だけだ。彼女の笑顔を見ていると僕の全てが許されているような気さえする。
僕は本当に彼女のことが好きなんだ、と心の底からそう思えた。
高校二年生になって、あいつが現れるまでは……。
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