人形を愛した男

人形を愛した男①

「まずは、人形を愛した人に会いに行こう」


私は、宮部さんと喜与恵と話した。


「停めてきました。」


「光珠さん、行きましょう」


宮部さんの笑顔を見つめながら思うのは、幸せになって欲しいと言うことと、私にはその笑顔はさせられないって事だ。


「お茶飲みますか?」


「うん」


宮部さんは、小さなペットボトルを差し出した。


「宝珠、これあげる」


「ありがとう」


私は、喜与恵にお茶をもらった。


「辛いの大丈夫でした?」


「無理だったよ。でも、美味しかったよ。キムチとチーズがはいっていて。」


「あー。もう、私が食べたかったのに!!」


「帰って、自分で作ればいいだろ?喜与恵」


「もう、知らないです。」


「怒るなよ!それが、許されるのは20代までだよ。喜与恵」


「見た目は、53に見えないですから!!」


「まぁ、確かにね」


喜与恵は、怒りながら歩いて行く。


「ここだな!」


ピンポーン


「はい」


「三日月宝珠です。」


「あーー。大きくなったね。宝珠君」


「お話を聞きたいのですが?」


「あの、オカルトライターの宮部希海です。」


「ハッハッハ、私は、オカルト案件か!!どうぞ、入って」


「お邪魔します。」


私達、四人を通してくれる。


三日月を破門にされたこの人。


私が、3歳の時だった。


この人は、19歳だった。


「珈琲は、飲めるかな?」


「はい」


「待っていてくれ」


「はい」


彼は、キッチンに向かった。


「まだ、能力があるのですね」


「占い師をやってるのか」


「サイキックですね。かなりの能力が、あるのではないですか?」


「そうだよ」


珈琲を持ってやってきてくれた。


「私は、見えないものを使って、電話占いをやっているんだ。」


「幽体を飛ばして見てるのですね」


「そうだよ、宝珠君。宮部さんだっけ?」


「はい」


「インタビューを受けようか?録音するんだろ?」


「はい」


宮部さんは、ボイスレコーダーを取り出した。


「喜与恵と三津木光珠だね。」


「なぜ?」


「三日月のものに関わる全ては知っているよ」


そう言って笑った。


「まずは、私の自己紹介だね。私は、三日月ニみかづきにじゅの弟だ。川澄藤吉かわすみときち。大々、サイキックを駆使して占いをして生計をたててる一族だ。私達は、幽体を飛ばして占いをするやり方だ。その能力をかわれた。兄の二郎が三日月に嫁いだ。私も、一緒についていった。それは、能力向上の為だった。私達は、四人兄弟だから…。誰が継ごうが大差なかったのだよ。」


川澄さんは、珈琲を飲んで笑った。


「何歳で、三日月にきたのですか?」


宮部さんは、質問した。


「私は、15歳で三日月についていったよ。兄は、7歳離れていてね。迷わずついてきたよ。」


「それから、どうなったのですか?」


「それから、必死に能力を練習したよ。血を酌み交わしたりして、能力はどんどん強くなった。17歳の夏。私は、既婚者に恋をした。彼女は、40歳だった。専業主婦でね。優しい人だった。既婚者に恋はしてはいけないだろ?それでも、落雷に打たれたような恋を止める事はできなかった。」


「お付き合いされたのですね?」


宮部さんの言葉に、川澄さんは首を縦に振った。


「秘密の恋だった。彼女は、子供ができなくてね。旦那さんも不倫をしていた。お互いに世間体を気にして一緒にいるだけの関係だった。それでも、彼女は旦那さんを愛していたのを私はわかっていた。」


川澄さんは、涙を拭っている。


「それで、どうなったのですか?」


宮部さんの言葉に、川澄さんは…


話しづらそうにしながら、話した。


「私が、18歳になってすぐに事故死しましたよ。」


「事故死ですか?」


「夫の不倫相手を殺そうとして、誤って転落しました。」


「なぜ、殺そうとしたのですか?」


「子供が出来たからですよ。それは、彼女にとっての裏切りだった。お互いに、ルールがあったからですよ。」


「不倫相手は?」


「死にましたよ。お腹の子と一緒に」


「どうして?」


「彼女が、執念で引きずり下ろしたからです。紐をひっかけてね。私は、幽体からのビジョンでそれを見せられた。」


川澄さんは、泣いている。


私達は、それを見つめる事しか出来なかった。


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