悲しい
私の話を聞いて宮部さんは、泣いている。
「三日月さん、悲しいお話ですね。」
「そうですね。」
「親からの愛を受け取れない子供は、世の中にどれだけいるのでしょうか?」
「目に見えていないだけで、スーパーで出会った子供がそうかもしれないですよ。」
「三日月さん、悲劇は繰り返されるのですね」
「ちゃんとした愛を知らぬものが、産む。その子もまた愛を知らぬまま大人になる。」
「その歪みを強制的に、正された人間が私や三日月さんですか?」
宮部さんの言葉に私は、頷いた。
「
「はい、お会いしました。」
「あちらは、何の因果か子孫がうまく繁栄しない家系です。」
「そのかわり、能力は
「はい!とても近いです。」
私は、宮部さんに笑いかける。
「満月家の長男はゲイだと言われました。長女は、レズだと言われました。次男だけが、唯一の後継者だとお話されました。しかし、なかなか子宝に恵まれず。一年前、やっと授かったと話しておられました。」
「女の子でしたか?」
「はい。なので、次は千川から養子を貰うそうです。」
「そうですね。満月家は代々、三日月と千川と交互に養子を貰いながら繁栄させてきたのです。何故か、満月家は同性愛者がよく産まれるのですよ。」
私の言葉に、宮部さんは頷いてから私を見つめて話す。
「いつになれば、歪みは正されるのですか?」
「生涯無理だと思いますよ。満月が、繁栄していくためです。」
「そうですよね。それでも、満月家の皆さんは、明るくて優しくて面白かったです。」
「そうでしょう。」
「はい!素敵な方々でした。」
宮部さんは、キラキラと笑った。
「では、またお話は明日でよろしいですか?」
「はい、勿論です。」
「あの、三日月さん」
「はい」
「あの日の事を覚えてますか?」
「あの日とは?」
「私と三日月さんが、たった一日デートした日です。」
「覚えていますよ」
私は、宮部さんに笑った。
「
「はい、そうですね」
「私は、ずっとあの日抱き締めて貰えた事もキスが出来た事も忘れてませんから」
「宮部さん」
「あの日、確かに私達は細い縁をお互いに手繰り寄せて繋げていたんだと私は、信じていたいです。いけませんか?三日月さん」
「いえ、そうでしたよ。私達は、手繰り寄せました。お互いに…」
「もう、何も感じないのが不思議です。」
「切れてしまったので、そうなのだと思います。」
「三日月さんが、苦しい想いをしていないなら私は、それだけで嬉しいです。」
「していませんよ。私は、宮部さんとこんな風にお話出来るだけで幸せですよ。」
私は、宮部さんに笑った。
「それなら、よかった。」
宮部さんも、私の目を見て笑った。
「宮部さん、幸せは人それぞれです。恋愛が成就する事が幸せな人もいれば、片想いが幸せな人もいます。人の数だけ恋愛もあります。私は、宮部さんとはこうやってお話が出来る事が幸せだと思っていますよ。」
「私もですよ。三日月さんとこうやって話せる事が幸せです。でも、あの一日は本当に幸せでした。」
「私もそう思います。でも、あのまま私達がうまくいった所で」
「光珠さんに会ったら消えるのですよね。」
「はい。」
「きっと、お互いを傷つけ罵り罵倒した。そんな三日月さんを私は想像できないし、見たくないと思ってしまう。だから、今のままがいいです。」
「私もですよ。そんな宮部さんを想像できないし、見たくないです。だから、今のままがいいです。」
「もう、光珠さんが来たみたいです。では、明日もよろしくお願いします。それと、バディの件聞いてみます。」
「はい、よろしくお願いします。お気をつけて」
私は、頭を深々と下げた。
宮部さんは、スキップでもしそうな勢いで帰って行った。
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