第5話 魔法はロマンだろ!ロマン!!

刈り取った羊の毛を持って帰った練は、ルミナの服を急ピッチで作り始めた。


「では、初めましょうか……金子練の3秒間アルケミングのコーナー!今回はこのでか羊の毛が素材です!

『それではいきましょう!』

そして出来上がってたのがこちらです!」


まぁ、急ピッチもなにも、錬金術で作るから一瞬なんですけど。それはそうと、完成したのは、太陽を細やかに反射して輝く純白のワンピースだった。


「羊の糸を視認不可能なレベルに分解してつくった白いワンピース!肌触りもまるで違う……これもう別物だな。」


一応彼は、毛が舞ったりしても良いように外で錬金術を使ったのだが、余計な心配だったようだ。

さて、ブツが完成すれば、後やることは一つだけ。練はウキウキで洞窟の中へと駆けていく。


「ルミナ~ただいま~!」


その声に気付いたのか、奥からとてとてと、可愛らしい足音がする。そして、ぱあっと洞窟が明るくなる。


『パパ!お帰りなさい!』


今更だが、龍の子供は念話によって会話をする。

何故なら、幼少の頃の喉は発声器官として発達より、ブレスや魔法など、その龍固有の能力を発動するための器官として発達させた方が、龍という種としては生き残り易く────

よく分かる龍種!〜強くなければ龍でなし〜著者 レイジ

の一節より引用


(あぁ心が洗われるようだぁ……っ!ルミナこそ……マイ、エンジェル……)


よくそんな恥ずかしい台詞が思いつくね。


「ほら…服作ってみたよ〜!」


『わぁ!ありがとうパパ!』


(あぁ心が洗われry


『だーい好き!』


(あぁry


これがいわゆるパパ活かぁ〜。

……嫌だな。主人公がパパ活する作品。



「完全に俺のエンジェルが寝静まったころ…俺は秘密の特訓をすることにした……!」


・異世界転移の特典その1

「俺のエンジェル」なんて気味が悪い台詞を吐けるようになります!


「やはり異世界のロマンといえば…魔法ッ!」らしく、彼は自己流で魔法を練習することにした。


「うーん何をするべきか………ではテンプレに沿い…魔力を放出するところから始めようか!」


気分は完全に黒魔術師。

今時の学生らしく、電子図書で買ったライトノベルの内容を思い出し、『テンプレ』を開始する。


「うーん……ぬぅん!魔力ッ!『出ろぉぉぉぉぉッッ!!』」


妙な手応えと同時に────


(あ、錬金やっちゃった?)


──手の上にちょっと冷たくてドロッとした紫色の謎物質が現れた。

かなり拍子抜けし、軽く意気消沈した彼は、錬金術の汎用性の高さに驚愕を覚えつつ口を開く。


「……『炎』。」


すると手の上の謎物質が一瞬で炎へと変わった。

何故か掌が火傷しないのかは不明だが、それも恐らく『魔法だから』というのが理由になるのだろうか。


(よし!これを錬金魔術と名付けよう…そしてッ!)


練は自らの手を顔に当て……共感性羞恥を爆発的に誘発させるような言動をとり始めた。


「ふはははははッ!我は既に究極の魔術を習得したァ……刮目せよッ!我から『いでし』魔力よッ!我が手中にて!光をも焼き尽くす闇の焔と『成れ!』ダークネスフレイム!」


・異世界特典その2

✝️孤高の黒魔術師✝️になれます!


その光をも焼き尽くす闇の焔が樹に当たって燃えた。


「やべ!魔力『出ろ!』大量の水にたと『なって飛んでけ!』」


光をも焼き尽くす闇の焔は、適当な錬金呪文に鎮火された。

ロマンだけが溢れた行動に、合理性を突き詰めた行動が負けるハズがないのだ……。


「悲しいなぁ…………あっ!!!」


そう、魔法が使えるとなれば…異世界ファンタジーに求められるアレ。


「魔法剣が使えるかもしれない!」


或いは属性剣。剣の刀身に魔力を宿し魔法と物理、両方からのアプローチで敵を滅ぼす。

超かっこいい!


「魔力『出ろ!』これを剣の刃の部分に塗って…なんかねっとりしてるぅ……ね〇ね〇ね〇ねのブドウ味みたい……」


さぁ、次はこのね〇ね〇に2の粉────錬金術を使うのだ。


「それじゃ、ゴホン 剣よ!風を『纏え!』」


紫の粘着質な魔力が、剣に絡み付く風のように変質する。これで風の魔法剣の完成。


「いくぞ!くらえ!ウィンドスラッシュ!」


なんてほざきながら、練はブンと剣を振る。

…………結果から言えば、練は間違いなく調子に乗っていた。

それにさっきの✝️ダークネスフレイム✝️のあまりの雑魚さに感覚が狂っていた。


『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がry


面白いほどに木々をスパスパ切り取って行く剣閃。急上昇するレベル。

予想外の剣と風のシナジーに練の顔真っ青。


錬金やっちまったぁぁぁぁ!!」

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