第4話 あれ?錬金術強くね?

『称号:ロリコンを獲得しました』


もはや罵倒に等しいシステム音の台詞に、練の心臓は再稼働する。


「な、なんて不名誉な称号だぁ!お、俺はロリコンじゃないぞぉ!……ちょっと前までの話だけど!」


否定出来ないのが悲しい所。

一応ここに再度記しておくが、やっぱりこいつがこの作品の主人公だ。

誠に遺憾ながら。


『パパーパパー!』


そしてまた彼は抱きつかれた。全裸の美幼女に!

はい、一貫の終わり。おまわりさーん!


(しかし!俺はこの子の……いやルミナのパパだ!

だから大丈夫!なんにも問題ありません。)


そう自分に言い聞かせているようだが、まるでさらさらと流れる小川の様にドロドロ流れる鼻血が、興奮している何よりの証拠だった。大丈夫じゃねぇ!大問題だよ!!

早く!!!おまわりさァァァァん!!!


「るみなぁ~!」


そうして練はルミナに抱きついた、つまり全裸の幼女にだ。確実にアウトだ。確実に児童ポルノで検挙だ。


(……児童ポルノ?果たして異世界にどれだけ地球のルールが適用されるのだろうか?この異世界では──少なくとも今は俺がルールだ。)


またまた自分にそう言い聞かせる。

………おまわりさァァァァァァ────ん!!!!!!!


『るみな?』


目の前の幼女は不思議そうにこちらを見上げる。


「ルミナ、君の名前だよ。」


『ルミナ』あの手紙に書かれていた名前を貰うことにしたのだ。

状況的にも、この子が手紙に書かれていた子だろう。


『るみな、るみな……パパ~ルミナ、パパだーい好き!』


太陽と見紛うほどの眩い笑顔。柔らかな抱擁。そんな聖のエネルギーをまともに食らった穢れた魂の行く先は当然あの世だ。


(あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛悶え死ぬゔゔゔゔゔッッッ!!!)


そのまま死ね。あとルミナちゃん渡せ。

by素晴らしき紳士達


「パパもだーい好き!」


そこで何を血迷ったか、練が取った行動はまさかの『抱き締め返す』だった。

読者の皆様、あまりのショックにお忘れかも知れないが、目の前の幼女は全裸だ。もうやだなんなのこいつ?


「────!」


そして突然、練に電撃走る。その電撃で勝手に亡くなれ。


(そうだ服を作ろう、ルミナの身体を俺以外にも………俺にも見せてはならないッ!)


練は心の中でそう誓った。

この物語は、チート能力でつよい敵をバッタバッタ薙ぎ倒す物語ではない。ロリを愛でる為に錬金術師として頑張る物語なのだ。

……ま、嘘なんですけどね。


「ルミナ、ここでお留守番できる?」


『ルミナ頑張る!』


ルミナ:ニコー!

練:ニチャァ!


きっしょ。


(あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛悶え死ぬぅぅぅッッッ!!)


しかも、ルミナの笑顔が眩しすぎてまた逝きそうになっていた。聖のオーラに焼かれるし逝きかけるし、こいつやっぱり邪神の遣いだろ。


(じゃ行ってくるね。)


逆だ逆!「」←これ使えよ!!!口に出さないと伝わるモンも伝わらないんだからよ!!


『パパ~行ってらっしゃい!』


(あ゛あ゛ぁ゛ry


はい。昇天は省略です。

ふと、洞窟を出たところで練はある事に気付いた。


「あ、そうだ。武器無かったわ。」


そして、くるりと踵を返す。

今の練は、勇者の称号を持たない雑魚。勇者の称号があっても森の雑魚敵に勝てないザコは、服の素材を集める為の武器、もしくは道具が必要なのだ。


「俺の今の攻撃力は10だからな…よーし錬金術の出番だ!」


洞窟入り口付近の壁に触れ、せっかく手に入れたなら使いたいランキング上位の錬金術を発動した。


「この壁でいいかな?錬金術発動!『剣よ、我が手中に顕現せよ』!!」


すると、見るからにヤバそうな禍々しい剣が出来た。赤黒い血のような金属が捻り絡み合うような剣。

だがルミナの教育に悪そうだという理由でボツになった。当たり前だよなぁ!!?


「うーん……『作り直し』!」


すると、テレレレーという効果音が鳴りそうな剣ができた。テレレレー。

これは…………著作権的にヤバそうな剣だった。詳細な説明は割愛させていただきます。


「『作り直し』!」


さて、次は────


(お……白と黒で彩られた混沌を彷彿とさせるような剣か……シンプルで使いやすそうだ!)


「混沌を彷彿とさせる」とか言っちゃうの草────と、思ったがしかし、その剣の様相は混沌と評するに値する姿をしていた。

白と黒が激しく捻れ絡み合うような容貌。華奢だが強靭、華々しくも雄々しい。そんな相反する様相が絡み合う……正しく混沌だろう。

何はともかく、「シンプルで使いやすそう」そんな理由で採用されたこの剣が、後からああなるとは作者も知らなかった。

そう、この時は知らなかったのだ……!


(装備はステータスからだったな…じゃあついでにステータスも見るか。)


こいつ心の声と独り言多いな。そう読者の皆様方からご指摘がございますでしょうが、暫くはこのスタイルです。ご承知下さい。


「『ステータス』そんで『装備』っと。」


名前:金子練

種族:人族

職業:錬金術師

装備:白き剣-ライト 黒き剣-ダークネス

ATK:80(+70)

DEF:45(+30)

INT:195(+70)

MIN:135(+30)

DEX:200(+50)

LUK:50(+25)

HP:150

MP:375

スキル:錬金術 試練 言語理解 苦痛耐性 

称号:異世界人 悪戯神の加護 運動音痴 ロリコン


一つ一つの上昇量は目を疑うほどでもないが、それでも練にとっては嬉しい上昇量だったようで、


「うぉっ!?武器の性能すごいな!……ちょっと詳細を見てみようかな〜」


そう言いながら、武器欄をタップする。

すると、ステータスが何処かへ行き、代わりに武器詳細が投影された。


白き剣ライト&黒き剣ダークネス


ATK+70 DEF+30 INT+70 MIN+30 DEX+50 LUK+25


スキルポイント:0


(なるほどスキルポイントで強化できるんだな!進化する武器か!うーんロマンがあるな!……あと見てないスキルとか称号もあったな…見ておくか。)


苦痛耐性:苦しみや痛みを軽くする


(これは気分だけっぽいな。それでも先に欲しかったぁ……。)


ロリコン:性癖の一種、見た目が少女から幼女でないと愛せない


(…これはひどい、ちょっと悪意を感じるわ。うん。とんでもない悪意を。)



3分後──


「さぁてとぉ!一狩いきますか!」


ステータスに満足した練が立ち上がり、剣を肩に載せようとしたが、自分の守備力を考慮してやめた。

セルフ袈裟斬りとか洒落にならんからね。

そして森の中を一歩きすると……


「へへへ……!いいモン持ってんじゃねぇか!!(主人公)」


大きな羊を見つけた。

『いいモン』とはそいつのモコモコの事だが……思想も行動も錬金術師ではなく強盗のそれである。


「ハァ!」


威勢よく切りかかったが、ダサくもギリギリ届かずに顔面ダイブ。運動音痴なので。

眼の前の羊も「なんかこけとるわい」とでも言うように徒歩で離れて行ってしまった。


「この!『当たれっ』!!」


姿勢を再度整え、剣を振り上げたが、勿論今度も空振る…………ことはなかった。

 

「え?」


スパーン。

そんな小気味のいい音がしたその時。

空振った筈の攻撃で、羊は真っ二つに首を切られ死んでいた。

当然、一番困惑したのは首を2つに切り分けられた羊さんだろう。

だがしかし、当人の練も結構困惑していた。


「どういうことだ?…もっかいするか…当たれっ!」


しかし、なにも起こらずに虚しく声が響くだけで、暫く待って何度か剣を振ってみたり、コケてみたりするが、全く錬金術が発動する気配はなかった。


「どういうことだ?じゃあ、この樹を『切れ』。」


ズザァァ…という音を立て、樹が倒れる。

切り株がキレイな切断面になっているという事実は、やはりそれは偶然ではなく、なんらかの力が発動しているらしい、ということを練に推察させた。


「この感覚……さっきの錬金術と同じ……か?」


(羊に剣が届いたのは、羊に剣を当てるという現象そのものを錬金して完成させた…ということなのか……?)


さて、訳の分からない理屈だが、実際のところ練は一刻も早くルミナちゃんの服を調達したかったので、どんな理屈でもよかったのだ。

……案外間違いでもない考察なのだが。


(とにかくこいつの毛でも『刈る』か。)


そう思った時、


「……え。」


既に羊の毛は刈り終わっていた。


(錬金術ってもしかしなくても勇者のスキルよりチートなんじゃね?)


まぁ、比較対象のスキル『勇者』を使った事はないのだが、練はそう思い込…………確信したのだった。

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